電車はなくても、幻の鳥はすぐそこに…。自然に囲まれた離島で育った剛腕がプロの世界に飛び込む。巨人に育成6位で指名された桐蔭横浜大・菊地大稀投手(22=佐渡)が26日、神奈川・横浜市の桐蔭学園内で指名あいさつを受けた。

新潟・佐渡島出身者では初のプロ野球選手となる。「応援されていると思うので、裏切らないように。いち早く支配下、1軍に呼んでもらえるようにしたい」と誓いを立てた。

一風変わった18年間を送ってきた。大学進学時、島を出たときに、驚いたことは電車の存在。「電車に乗ったことがなかった。駅でも人が多いなと。人の多さに驚きました」。かつて野生絶滅にも指定された国鳥トキは、家の裏にいることもしばしば。日常に溶け込んでいた。

佐渡の経験を力に変える。整地されていないコースも含め、約10キロのお決まりコースを走る“山ラン”で下半身を鍛え上げた。「(ストロングポイントは)丈夫な体がある。まずはケガをしない選手になる。ケガをしなければずっと投げられる」と長いイニングを投げても、質が落ちないスタミナを手に入れた。186センチ、91キロから投げ下ろす最速150キロの直球が持ち味の本格派右腕に成長した。

佐渡時代にもプロのスカウトから注目されたが、指名漏れ。悔しさを糧に、大好きな故郷・コシヒカリのお米をかき込んで体作りから見直した。「自然だったり、食べ物だったり、お米もおいしいので伸び伸びと育つことができる環境だと思います」。大好きな故郷の期待を背負い、1日でも早い支配下昇格を目指す。その先に、島民の総人口と同程度の観客が詰めかけた満員の東京ドームで投げる未来をイメージしている。【小早川宗一郎】