あ~あと1人で…。阪神伊藤将司投手(25)が、プロ初完封目前の9回2死からDeNA牧に同点打を浴びた。5回に先制打を放ち、プロ初点。自ら決勝打を放って1-0の完封勝利なら、球団では73年江夏豊以来の快挙になるところだった。試合は、延長12回に4番手斎藤が元阪神の大和に勝ち越し打を浴び、12球団最速で10敗に達した。

     ◇    ◇    ◇

【写真たっぷり詳細ライブ】連敗脱出した阪神、甲子園で連勝なるか?

3万人を超える「あと1球」音頭が、一気にため息に変わった。1-0でリードの9回2死二塁。伊藤将はフーッと息を吐いた。フルカウントから牧へのラストボール。チェンジアップが高めに浮いた。ダイビング捕球を試みた中堅近本のグラブの先で打球ははずみ、同点適時打。土壇場で試合は振り出しとなった。

「1点差の緊迫した試合で、全体的に粘る投球はできたと思う。ただ、9回、なんとかあのピンチを抑えて勝ち切りたかった…」

9回4安打1失点。昨季プロ初完投を含む3勝を挙げたDeNA打線に的を絞らせなかった。ただ、先発投手として胸を張れる内容でも、納得はいかない。「ああいう場面で抑えきれるように、次の試合に向けて準備して臨みたい」。投げ終えた直後、ベンチでは何度も顔をしかめた。

打って投げて。野球の醍醐味(だいごみ)を体現した。5回2死一、二塁。左腕石田の外角カットボールにバットの先で食らいついた。左前にポトリと落ち、プロ48打席目で初適時打、初打点となった。千葉・横芝中の軟式野球部時代には投手で1番打者。横浜高2年時には、夏の甲子園で前橋育英の高橋光成(現西武)から左前適時打を放った。打撃センスはある。何より、かつてプロゴルファーを目指し、オフにベストスコア80の息子とゴルフ勝負しても負けない、父正宏さん(53)の血を引いている。「振ること」は体に染みついた得意分野。ここ一番でそれが出た。

1-0完封投手の決勝打となれば73年、ノーヒットノーランを達成した江夏豊のサヨナラ弾以来、49年ぶりだった。あの1球で抑えていれば…。矢野監督は「もちろん責めることはないし、あそこは将司に任せようと思った。将司の仕事っていうのはしっかりやってくれた」とかばった。悲劇の9回から1時間43分後、チームはまさかの5点差で敗戦。天国から地獄-。これ以上ない悔しさを糧に変えるしかない。【中野椋】

▼自ら先制打を放った伊藤将が9回2死から同点打を許し、快挙を逸した。投手が自らの決勝打を守って1-0完封勝ちしていれば、90年4月28日に大洋(現DeNA)中山裕章が阪神戦で記録して以来だった。阪神では江夏豊が73年8月30日中日戦で、延長11回ノーヒットノーランを達成した上、自らサヨナラ本塁打を放って以来49年ぶりとなるところだった。

阪神ニュース一覧はこちら―>