頼れるリードオフマンのバットが、混戦に終止符を打った。同点の9回1死。打席に入ったソフトバンク周東は初球を見逃さなかった。オリックス宇田川の153キロ直球。思い切り振り抜くと打球はライナーで右中間テラス席に飛び込んだ。5号サヨナラ弾。ダイヤモンドを「快走」し、ホームベース上でナインにもみくちゃにされた。

「外野の頭を越えてくれと思ったけど、まさか入るとは思わなかった」。ヒーローは白い歯を見せて笑った。打撃練習でも飛び込まないという右中間最深部。8回に3点差を追いつかれ、イヤなムードが漂った中での殊勲の1発だった。

初回から「周東デー」だった。先頭打者で遊撃内野安打で出塁。すかさず二盗、続く今宮のセーフティー気味の送りバントと敵失で先制のホームを駆け抜けた。自慢の足は打撃、走塁だけでなく中堅の守備でも披露。2回2死満塁のピンチでは中川圭の中堅後方への強烈な打球を背走し好捕。窮地を救った。2打席目は右中間を破る三塁打。4回の3打席目は左手首に死球を受け出塁、今宮の2点打を呼び込んだ。

ハラハラドキドキの試合展開に「血圧が上がりそう」とため息をつきながら、会見場に現れた藤本監督も周東には最敬礼だ。「周東がよく決めてくれた。まさかのホームラン。ありがたい」。今季2度目のサヨナラ勝利はいずれも周東の1発でケリをつけた。

首位奪取へ快足男・周東がチームにフォローの風を送り込んだ。【佐竹英治】