中堅2人のバットが、一瞬、甲子園の空気を変えた。

阪神1点ビハインドの8回だ。先頭、代打で陽川尚将内野手(31)が登場。代わったばかりのDeNAエスコバーの155キロを打ち砕いた。

陽川 2球で追い込まれてしまったので、なんとか食らいついて、とにかく塁に出ることだけを考えて。しっかりと自分のスイングができたし、最高の結果になって良かったです。

弾丸ライナーで左翼スタンドへ着弾。今季1号が値千金の同点ソロとなった。ベンチでは狂喜乱舞する仲間に祝福を受けまくり、久々の「ゴリラポーズ」を披露。何度も拳で胸をたたいてみせた。

ここで終わらない。2死一、二塁となり原口文仁内野手(30)だ。内角154キロをしぶとく左前へ落とした。二塁走者中野がヘッドスライディングで本塁生還。4番大山が申告敬遠された直後、ざわめく甲子園を一振りで黙らせた。

原口 悠輔(大山)が敬遠されましたが、冷静に打席に入ることができました。尚将(陽川)がいい流れを作ってくれたし、みんながつないでつくってくれたチャンスだったので、絶対になんとかするという思いでした。拓夢(中野)もよく走ってくれた。

一時勝ち越しとなるタイムリー。仲間思いの男は、お膳立てしてくれた面々の名前を挙げ感謝した。7試合連続スタメン起用でこの間19打数7安打、打率3割6分8厘。欠かせない存在になりつつある。

開幕1軍に名前のなかった男たちだ。鳴尾浜で汗を流し続けた日々が、秋風吹き始めた9月に生きる。矢野監督も「もちろんその前に点を取らなあかんと思うけど、尚将が1発で流れを変えてくれたんでね。フミ(原口)のタイムリーも大きかったし、なんとか粘りをみんな見せてくれたとは思います」とたたえた。糸井の引退試合となる21日。もう負けられない。束になって花道を飾る。【中野椋】

▽阪神岩貞(6回、DeNAに勝ち越された直後の無死一、二塁で登板し、2球で2アウト)「「とにかく勝ちたい! その思いだけで投げました」

▼阪神は今季の勝ち越しがなくなった。現在65勝70敗3分け。残り5試合に全勝しても70勝70敗3分けの5割に終わるため。21日広島戦に△以下で、シーズン負け越しが決まる。仮に3位以内に入りCSに進めば、阪神では15年に70勝71敗2分け、勝率4割9分6厘の3位以来、2度目の貯金なしCSとなる。

▼阪神は今季DeNA戦を9勝16敗で終えた。DeNA戦年間16敗は04年(当時は横浜)に16敗して以来、18年ぶり。なお、DeNA戦の年間最多敗戦は78、98、99年の19敗。

○…青柳は6回途中2失点で自身最長タイの7戦連続白星なしとなった。1回、3番佐野に先制ソロを献上。3回1死満塁のピンチでは耐えたが、同点の6回に1四球と2連打で勝ち越されたところで降板した。7奪三振も3四球と球数がかさんだ内容。矢野監督は「粘ったと言ってもヤギの求めている投球じゃないと思う」と振り返った上で「まだあると思うので頑張ってもらいたい」と次回の変わり身に期待した。

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