極限のひらめきが生きた。オリックス福田周平外野手が、ここ一番で“奇策”を決めた。 

「まさかバントしてくるとは思ってなかったと思う。そのカウント、そのシチュエーション。(考えたのは)カウントがノースリーになってからです」

誰もが驚いた。3万1442人が集まった京セラドーム大阪が、一瞬止まった。同点に追いつかれた直後の9回裏2死三塁。3ボールからの4球目に作戦を決行。一塁方向にバントを転がした。ロッテの一塁山口のタッチをかわし、三塁走者の紅林がホームに突っ込んだ。意表を突くサヨナラセーフティーバント。歓喜のウオーターシャワーにぬれた。

背番号1が一塁ベースに飛び込むと、ナインが駆け寄った。「水じゃなくて…。いっぱいアクエリアスがかかって。悪いやつがいるなぁ。ベトベトです」。爽やかに髪をかきあげた。

この日、首位ソフトバンクがオリックスより先に勝ち、優勝マジックを1としていたため引き分けてもリーグ連覇が消滅する状況だった。9回に守護神の平野佳が1点差を追いつかれたが、福田は「野球は切り替えのスポーツ。切り替えてチーム全員で」と深くうなずいた。

残り1試合。中嶋監督は「絶対に負けちゃいけないというところが必ずある。最後まで諦めずに、可能性があるのなら(連覇を)行きたい」と話す。福田の奇襲成功が、ペナントレース最終盤で流れを変えるか。逆転連覇の望みをつないだ。【真柴健】

 

○…エース山本が意地を見せた。今季初の中5日で7回を110球、7安打2失点にまとめた。だが納得はいっていないようで「なんとしても勝たないといけない試合で、リードを守り切れず(7回に)追いつかれてしまって悔しいです」と反省の言葉を並べた。10三振を奪い、今季205三振に到達。最多勝など、2年連続先発のタイトル総なめが見えてきた。

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