ラオウが雪辱打で試合を決めた。オリックス杉本裕太郎外野手(31)が、3回2死二塁から先制の左前適時打を放った。1回の第1打席は2死満塁から空振り三振。先制機で空を切ったが、第2打席でリベンジを果たした。この一打が決勝打となり、チームは第4戦にして初勝利。パ・リーグ王者の反撃が、ここから始まる。

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ようやく笑みがこぼれた。3回2死二塁。ラオウ杉本が、カウント1-0からヤクルト石川のチェンジアップをたたいた。欲しかった先制適時打が、左翼線で弾む。一塁へ走りながら、力強く拳を握った。

「なんとかやり返したい気持ちでした」。クリーンアップの一角、5番からスタートした今シリーズだったが、調子はいまひとつ上がってこなかった。シーズン終盤からスタンスを狭めるなど、打撃フォームも試行錯誤。前夜は打順が7番に下がった。この日は6番で起用されたが、初回2死満塁の絶好機で空振り三振。カウント1-2から132キロ直球に空を切り、球場にはため息がもれた。再び巡ってきた好機。ファーストストライクをしっかり捉えて雪辱し、ベンチではホッとした表情を見せた。チームが2敗1分けと苦境に立たされていた中での価値ある一打。中嶋監督も「まだまだ注文することはいっぱいあるが、タイムリーっていうのは大きい」とたたえた。

杉本は打席でポーカーフェースを貫く。これは能見投手兼任コーチのひと言がきっかけだ。あるとき「(気持ちが)表情に出やすい。それだと不利になるから出さないようにした方がいいよ」とアドバイスを授かった。杉本は「能見さんは投手なのに野手の自分たちのこともよく見ているなあ」と感心するとともに、感謝。それ以来、大先輩の助言に従って、投手と対峙(たいじ)したときは無表情を心がけている。

“ポーカーフェース打法”で呼び込んだ今シリーズ初勝利。お立ち台で打席での狙いを問われた杉本は「それはシリーズが終わるまで秘密にしておきます」とニヤリと笑った。もちろん第5戦以降も打つため。勝てばポーカーフェースはいらない。試合後は、思い切り勝利を喜んだ。【高垣誠】

○…今年のシリーズで初のスタメンに抜てきされた太田が、2出塁で好機をつくった。9番・二塁で先発し、2回の第1打席では四球で出塁。7回1死からは中前に初安打を放った。「久しぶりの試合だったのでとにかく振っていこう」と初球を安打にした。昨年は第5戦で2安打を放って勝利に貢献。「スムーズに試合に入れている」と昨年の経験を生かし、攻守ともに投手陣を支えた。

○…佐野皓が「1番中堅」で日本シリーズに初先発した。初回に石川の初球を捉えて左翼線を破る二塁打。シリーズ初安打に「思い切りの良さで勢いづけられたらと思っていた。緊張したけどもうやるしかないと思った」と積極的な打撃だった。フル出場して3打数1安打、1犠打。初勝利に貢献し「いい形でやれた」とかみしめた。

▼オリックスが1-0で逃げ切り、今シリーズ初勝利を挙げた。シリーズの1-0勝利は14年<5>戦ソフトバンク以来17度目となり、オリックスは初めて。オリックスの安打は3本だけで、3安打以下の勝利はシリーズ8度目(最少は2安打勝利)。オリックスにとっては3安打以下の勝利も初めてになる。2連敗後に初勝利を挙げたケースは16年日本ハムまで過去18度あり、逆転優勝は6度でV確率33%。逆転Vの6度は次の試合も勝ってタイに戻しており、今日の試合は負けられない。

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