家族へ、師匠へ、恩返しの思いを込めた。昨年8月に国指定の難病「黄色靱帯(じんたい)骨化症」の手術を受けた三嶋一輝投手(32)が、ヤクルト戦で355日ぶりの白星を挙げた。同点の7回から登板。1回を1安打無失点に抑え、その裏に戸柱が決勝の2号3ランを放ち、昨年5月6日の広島戦以来の白星を手にした。チームはハマスタ8連勝を飾って、2位阪神との差を2ゲームに広げた。

お立ち台に上がった三嶋は、あふれる感情を抑えながら、青く染まったスタンドのファンに向かって、言葉を紡いだ。「何て言うのかなぁ…。とにかく、うれしいです。ありがとうございます!」。必死に絞りだした言葉に歓声と温かい拍手が送られた。自身も、チームメートも、ファンも、家族も待ちに待った355日ぶりの白星だ。

「勝ち投手になれて、本当に最高の1日になりました。いろんなものを背負って戦わなきゃいけないし、本当に今日はいい日だったと思います」

昨年8月29日、国指定の難病「黄色靱帯(じんたい)骨化症」の手術を受け、復活への戦いが始まった。キャンプ中に実戦復帰、4月1日の阪神戦で公式戦復帰などいくつもの復帰登板を経て、9日の中日戦で公式戦初のハマスタ復帰登板後、「この場を借りて、あえて言うなら」と口にしたのが妻への思いだった。

「5歳と1歳の子がいるんですけど、大変な時期にもかかわらず、野球のことだけを考えてほしいと。『絶対、大丈夫だよ』という言葉も掛けてくれたし、すごく感謝してます」

この日の試合直後、手元にはまだウイニングボールはなかったが、三嶋は即答した。「妻と子どもたちに渡したいです」。

そして、もう1人、この日の7回のマウンドに送り出してくれた三浦監督への感謝も口にした。「僕が手術して、1軍の戦力にならなかったら、監督も悲しむだろうから、本当にびっくりさせられるくらいね、絶対に戻ってきてやろうと」。ハマスタ8連勝を飾って、がっちりと首位をキープした夜、あらためて誓った。「しっかり1日1日戦って、苦しんでる人たちにも届けばいいなと思います」。また1歩復活への階段を上がった。【久保賢吾】

◆黄色靱帯(じんたい)骨化症 原因不明の国指定の難病で、背骨に沿った靱帯が骨化して脊髄を圧迫する。下肢の脱力やしびれがみられ、悪化すると両下肢まひをきたすこともある。プロ野球では元オリックス酒井、宮本、巨人越智、ソフトバンク大隣らが発症。

DeNA三浦監督(三嶋の白星に)「ビシッと後ろにつないでくれた。ファンの方の声援も違いますし、また大きくなって戻ってきてくれた」

DeNA石田(6回1失点の好投も反省を忘れず)「守備の時間が長くなり、攻撃のリズムを作れなかったことは反省点です。次回登板は向かっていく姿勢を意識して、攻めの投球をしたいです」