会社で縦じま背番号3の躍動を確認しながら、ふと気になった。
「阪神で1年間4番で出続けた選手って何人ぐらいいましたかね?」
記録班に調べてもらうと、「虎の4番」がどれだけの“苦行”なのかを再認識できた。過去にわずか4人しかいなかったのだ。
18年ぶりの「アレ」に向かっていよいよ独走態勢に入った虎。その4番は誰?と聞かれれば、虎党であればもう即答できることだろう。
大山悠輔は今季ここまで全110試合で4番スタメンを張り続けている。ちょっと気が早いかもしれないが、残り33試合をクリアすれば栄えある5人目になる、ということだ。
先人の名前を連ねれば、その重みを理解できる。1リーグ時代から、阪神で全試合4番先発出場した選手は以下の通り。
52年藤村富美男120試合
69年カークランド130試合
82~83年、85年掛布雅之130試合
04年金本知憲138試合
05~06年金本知憲146試合
07~09年金本知憲144試合
そうそうたるレジェンド勢の中、大山が今年達成すれば09年金本以来14年ぶり、生え抜きプレーヤーに限れば85年掛布以来38年ぶりの快挙となる。
大山と「虎の4番」との格闘歴はもう長い。
阪神の第101代4番に抜てきされたのは、まだルーキーイヤーだった17年9月のこと。球団新人では実に53年ぶりの大役だった。それからかれこれ6年間、4番定着を期待されて現在に至る。
以前は阪神4番という重責について「やっぱり本当に厳しいモノなので…」と苦笑いしていた。「今日活躍したらすごく盛り上げてもらえるけど、明日打てなければたたかれる。気持ちのコントロールというところは本当に難しいです」。もちろん今もそんな苦悩は続いているのだろうが、その立ち振る舞いは堂々たるものだ。
110試合終了時点で打率2割8分6厘、14本塁打、61打点。本塁打と打点はチーム最多で71四球はリーグ最多を誇るが、数字以上の存在感は常に全力なプレースタイルのたまものに違いない。
勝負強さが増した打棒のみならず、一塁では好守を連発し、走者としても激走を繰り返す。「やりがい、達成感はものすごくある場所」とも表現していた4番がすっかり板についた主砲。歴史を塗り替える確率は極めて高そうだ。【野球デスク=佐井陽介】