ソフトバンク藤本博史監督(59)が本音でチームを語る企画「藤もと亭」。第6回のテーマは「不屈の近藤健介」です。
7月30日のロッテ戦では、中堅から本塁送球の際に右膝を負傷。8月は首脳陣からも代打出場を提案されましたが、志願してスタメン出場を続けました。そんな手負いの状態で月間成績は打率3割4分2厘、6本塁打、18打点。指揮官は、打撃3部門全てトップ3と好調の要因を「けがの功名」と分析しました。【取材・構成=只松憲】
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近藤は7月30日に守備で右膝を痛めて途中交代した。長期離脱を避けるために首脳陣は代打起用も考えたが、スタメンを続けた。
藤本監督 あの時はすごく迷った。近藤に無理をさせたくなかったし、あれ以上は悪化させたくなかったのが本心です。でも打線の状態が良くなかったから、近藤を欠かせば本当にしんどい状態になってしまう。近藤自身もずっと試合に出続けてきたし、「打つ方は痛くない」と言ってくれた。それだったら出ましょうか、という話になったんです。DH枠だから柳田を守らせないといけなくて、柳田にも負担になってしまった。選手たちには申し訳ないと思っています。
スタメン志願の近藤を1度は引き留めたという。
藤本監督 当然、3日間ぐらい休ませることは考えました。最初のトレーナーの報告では、6割程度なら走れるということで、どうしようかと。コーチともいろいろ相談しましたし、近藤とも話をした。本人の強い意志もあったし、いけるのだったらいこうと。でもその代わり走らないで、ランナーをかえしてくれと。ランナーをかえす打順にできるだけ置くからね、と。だから近藤の前に出塁率が高い選手を置いて。なかなかうまくいかない日もあって、近藤がチャンスメークっていうこともあったけど、その時は仕方がない。そう割り切って近藤は4、5番に置いてたりしました。
手負いの状態で8月は打率3割4分2厘。6本塁打、18打点はともに月別でトップの数字だ。指揮官が分析する好調の要因は。
藤本監督 足を痛めて逆に軸がしっかりしてきた。本人とも話したけど、走ると足に負担がかかるからゴロアウトは嫌だって。フライを打つ意識の中で軸が全くブレなくなって、逆方向へのホームランも出始めた。「けがの功名」。それまでもずっと打ってたけど、かなり長打が出始めた。あれって、案外近藤にとってはいいヒントだったのかなって。当然ホームランはキャリアハイを更新し続けてたけど、逆方向にあれだけ飛ぶホームランは、けがをする前に比べてなかったよね。やっぱりフェンス手前までで二塁打になったりっていうことはあったけど。やっぱり軸がしっかりしてるというとこが一番じゃないかな。
FA移籍1年目で頼もしい。
藤本監督 本当に頑張ってくれてます。凡退した時の悔しがりようなんかは、他の選手にはないような悔しがり方をすることがある。それぐらい1打席1打席に集中してるって分かりますよね。そういうところは見習ってほしい選手もいます。バッターってずっと試合に出ていたら「この1打席はいいや」「次いこう」って思ってしまう打席もある。でもそういうのが近藤にはない。1打席1打席、全部ヒットを打ちにいっているし、そうでなくても四球を取ろうとする姿勢が分かる。そこはベテランでも主力でも若い子でも、いいところはまねしてほしい。
5月には打率2割3分2厘まで下がったが、今は3割1厘まで上がった。
藤本監督 日本ハムにいたころの近藤と、ホークスにきた近藤への攻め方は違ってくると思います。FA移籍したから、相手も警戒して絶対に抑えようっていう気持ちもあるだろうし。その中で最初は出遅れたかもしれないけど、結局はこの数字まで上がってくる。素晴らしいバッターですよね。今季は残り32試合ですが、やはり上位進出には近藤がカギになることは間違いない。近藤に限ったことではなく選手には負担をかけて申し訳ないけど、最後まで走りきってほしい。
◆藤もと亭 98年の現役引退後に福岡市中央区平尾で開業した居酒屋。正式名称は「うまいもんや 藤もと亭」。藤本監督がオーナーを務め、新鮮な魚料理や野菜など季節にあわせたメニューが人気だった。「元プロ野球選手の気さくな店主がいる」と話題になり、多くの野球ファンが集った。11年からソフトバンクの2軍打撃コーチに就任するため、10年12月で閉業。



