延長12回の末に敗れ、西武の今季の勝ち越しはなくなった。

3時間43分の試合と、直後のミーティングが終わる。選手たちが次々引き上げる中、古市尊捕手(21)の姿がない。ベンチ裏で頭を抱え、1人だけの時間を過ごしていた。

延長12回2死三塁、ロッテ藤原に対してカウントは1-2。あと1歩で負けはなくなる。ボー・タカハシ投手(26)に内角へのスライダーを要求した。しかしスライダーは外に抜け、古市も止められず。記録は暴投。決勝点を許した。

1度ロッカールームへ引き上げた野田浩輔バッテリーコーチ(45)が「明日も試合あるんだよ」と苦笑いしながら戻ってきた。古市のところへ。

20分以上、感情を整理して、古市が立ち上がった。もちろん明るいはずはない。「やっぱ悔しいです。あれで負けたので…」と言葉を絞り出す。

それだけ勝負球に集中していたのか。「スライダーが、ワンバンの方に気持ちが…」と振り返った。

野田コーチが補足した。「あのケースで次の打者も頭に入れたら、捕手はひっかけのワンバウンドを予想して、ブロッキングに意識が」。抜けたスライダーは決して捕球不可能なゾーンではなかったが、とっさの反応は及ばない。古市は「…頑張ります」と最後も絞り出した。

野田コーチは言う。

「でもやっぱり、捕手としては投げた球は全部捕りたいし。みんな泣くんですよ。古賀も。捕手は143試合、その連続だと。どれだけ悔しい思いをしても、次の日に試合あるんだと。悔しいなら、その気持ちをずっと忘れずにやってくれと」

そう願う。

古市は春に育成選手から支配下登録されたばかりで、キャリアも浅い。

「まだ2年目ですよね。彼がこれからずっと野球をやって、最後に振り返る時に『あれがあったから』って思えるように頑張って行ってくれれば」

野田コーチは「また明日、です」と前を向いて、球場をあとにした。【金子真仁】

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