闘将に導かれた左腕が、13年間の現役生活を全うした。楽天塩見貴洋投手(35)が楽天モバイルパークで引退会見を行った。直近3年の1軍登板は2試合。10月に戦力外通告を受け、現役続行を目指していたが、オファーがなく決断した。1年目の9勝が自己最多。けがに泣いたプロ生活も「今はもうスッキリしてるというのが素直な気持ちです」と後悔はない。

星野門下の1期生だった。10年のドラフト1位で八戸大(現八戸学院大)から入団。当時、監督に就任して間もない星野仙一氏が、ヤクルトとの競合の末に交渉権を獲得した。「星野さんには怒られた思い出しかないです。現役の時は『なんや、このクソオヤジ』と思ってましたけど、監督を退いて、会ってみても『いいおっさんやな』と。この人に取ってもらって良かったです」と感謝する。

塩見ら当時の若手投手は星野監督と「交換ノート」をしていたという。登板した日の反省点などをつづって提出。赤ペンでメッセージが記入されて戻ってくるが「達筆すぎて文字が読めなかった」と秘話を明かした。

来季からアカデミーコーチに就任。子どもたちに野球の楽しさを伝える「塩見先生」として新たな1歩を踏み出す。【山田愛斗】