「■■■■行きます!」。ヤクルト石川雅規投手(44)は、星野ブルペン捕手へ聞き慣れない言葉を発した。ブルペン投球も終盤のころ。いつものように、ロジンバッグを大量にまぶした。ボールを見つめ、握りを丹念に確認。息を整えると、左手から発射した。球速は100キロ台ほど。不規則な回転から、低めに縦に落ちた。ナックル? いや、違った。星野ブルペン捕手が証言した。「いや、あれはパックルなんですよ」。今キャンプ最多の100球のうち、幻の球はわずか1球。石川は「まあ1球だけだけどね。試しで」。

変化球の魔術師が新たな領域に進んだ。ストレート、カーブ、チェンジアップ、スライダー、高速シンカー、緩いシンカー、カットボール、シュートに次ぐ9個目の新球。星野ブルペン捕手は「まだ僕もどう動くか、本人もどう動くかちょっとわかってないような感じ」と制球はこれから。パームボールとナックルボールの間のようなイメージ。「今日はちょっとシンカーに近かった感じなので、奥行きが使えるような、バッターが『ん?』って思わずうなるボールにしたい」と創造の途中だ。

レジェンドの一言がきっかけだ。キャンプの臨時コーチを務めていた古田敦也元監督が「石川が『新球、何かないですか? 』って言うから、パックルあるよと」と指南した。前日12日に、立ち投げで試投。この日のブルペンで座った捕手相手に解禁した。球界投手最年長44歳。200勝まで15勝の石川は「(投球の幅)広がったらいいけど」。誰も、軌道の行き先は分からない。パックルが勝手に、打者の空振りを誘えばいい。【栗田尚樹】

◇ヤクルト石川の球種

ストレート、カーブ、チェンジアップ、スライダー、シンカー(2種類)、カットボール、シュート、パックル