阪神近本光司外野手(29)が、能登半島地震の被災地へバットを寄付することが14日、分かった。自身が使用するヤナセ社のバット約150万円分を石川・輪島市と珠洲市の小学校、中学校、高校に送る。3月のセンバツに出場する日本航空石川も輪島市内の学校で、現在は同校が練習を積む日本航空(山梨)へ14日に発送。キャンプ地の沖縄・宜野座から、「近本バット」が少しでも被災地の野球少年少女を勇気づけることを願った。

  ◇  ◇  ◇

近本は、1月の自主トレ期間でヤナセ社の担当者と話し合い、バットの寄付を決めた。「自分のできることって、しれている…。でも、しっかり誰かの元気になればいいなと」と静かに願いを語った。約150万円分のバットは、輪島市と珠洲市の小学校、中学校、高校に送られる。輪島市内にある日本航空石川が、3月のセンバツへ向け系列校・日本航空のある山梨県で鍛錬を積んでいる最中で、14日に30本程度の木製バットが発送された。今後、その他の学校にも状況を見て届ける予定だ。

兵庫・淡路市出身。自身も生後2カ月のタイミングで阪神・淡路大震災に被災している。まだ生まれたばかりで当時の記憶はないが「話は地域の人から教えてもらうことがほとんどやから。そういうことって覚えてるんよな」と体験談は常に身近にあった。高校は社、大学は関学大と、島を出てからも兵庫県内で学生生活を送ってきた。学校教育などでも「1・17」に触れてきたからこそ、北陸の震災にも胸を痛めないはずがない。

オフの自主トレ期間は子どもたちとの触れ合いを大切にしてきた近本らしい支援だ。12月には地元の淡路市内での自主トレを数日間一般開放。子どもたちと追いかけっこする企画で盛り上がるシーンもあった。1月には毎年恒例の鹿児島・沖永良部島で研さんを積み、練習の合間には快く交流に応じた。背番号5の願い通り、「近本バット」も次代を担う野球少年少女たちの希望となるはずだ。

沖縄・宜野座での春季キャンプは第3クールが終了。「現状は及第点かな」と自己評価は決して高くないが、順調に調整を進めている。16日からの第4クールからは、いよいよ対外試合がスタート。次はリーグ連覇という明るいニュースを届けるため、バットを振り続ける。【中野椋】

◆能登半島地震へのアスリートの支援 義援金という形での寄付が多く、ドジャース大谷は球団と共同で100万ドル(約1億4500万円)を、能美市出身の松井秀喜氏は1000万円を寄付。プロ野球選手会はチャリティーオークションを実施。ヤクルト村上や阪神大山がサイン入り打撃用手袋、オリックス頓宮がサイン入りレガーズを出品した。楽天田中将は自身も愛用する「西川マットレス」100本を寄付。また、JリーグOBは今年4月にチャリティーマッチを石川県の「金沢ゴーゴーカレースタジアム」で開催することを発表している。