すさまじい打球音に肝が冷えた。しかし飛球は球威でねじこめていた。センターフライ。西武平井克典投手(32)は「危なかった~」と苦笑いした。

何の因果か、ソフトバンクにFA移籍した山川穂高内野手(32)との対戦が回ってきた。同い年、同じタイミングで国内FA権を行使した。「あいつ、どうするんだろ?」。宣言後、山川の動向を気にしていた。

自身は残留を決断。この日は試合前にファンから「残留してくださってありがとうございます!」と温かな声をかけられた。

一方、山川はチームを去った。「そこは、別に」。複雑な思いとかはない。そしてこれまた何の因果か、山川は移籍先で自身と同じ背番号25を付けている。

5回に3番手で登板し、無死一塁で山川との対戦になった。

「なんか、スイッチが入った気がします」

スライダーがファウル、フォークが外れ、カウント1-1に。3球目の直球は143キロ。この時期の自身にしては出力を高めに投げ込んだら、それが浮いてしまった。「危なかった」の言葉につながった。

「…抑えられてよかったです」

小声でニヤリとする。声色を戻す。

「でも、ほんと、逆にいいスイッチが入った気がしますね。シーズン中のような。打たれたくない、絶対抑えてやる、みたいな。いつもとは違うスイッチが入りました」

プロ7年間で337試合に投げ、酸いも甘いも味わった。愛知出身。地元のソウルフード「スガキヤラーメン」の一部商品値上げに「住みにくい世の中になったのう」と嘆くものの、己の“すみか”は譲らない。タフネス右腕は今年も健在だ。【金子真仁】