おめでたい話題に久々に「へえー」と声が出た。大関貴景勝が婚約した。その事実はもちろん驚きだが、お相手の千葉有希奈さんの系譜が興味深かった。「元大関北天佑」の次女。14年前、45歳の若さで他界した。愛称は「北海の白熊」。豪快な取り口で人気だった北天佑が好きで、個人的に角界への入り口だった。

80年代、大横綱千代の富士の全盛期。その中で北天佑の相撲は独特で気持ちがよかった。両方の握力は100キロ近いとされた。その怪力を武器に、得意の右四つで食い止めたら力勝負が始まる。特に千代の富士との引きつけ合いは大興奮だった。「末は横綱」を確実視されながら、けがなどが重なりかなわなかった。しかし、その相撲っぷりはいまだ、強烈に残っている。

土俵以外ではインタビューなどでも話すことが苦手な寡黙な印象だった。そのDNAを受け継ぐ有希奈さんと貴景勝が結ばれる。先走りすぎだが、もし男の子が生まれたら…想像はふくらむばかりだ。

押し相撲で大関の地位にある貴景勝に、四つ相撲を極めて幕内優勝2回の北天佑の血が加われば、最強の力士が誕生するのでは。それぞれに個性的な強さを発揮していた、しているだけにそんな妄想を描いてしまう。同じような考えは、自分だけではないだろう。

「血の系譜」は尊い。「若・貴ブーム」も背景にはおじの元横綱若乃花、父の元大関貴ノ花がある。最近でも元関脇琴ノ若の長男、琴ノ若が幕内で活躍(秋場所は西十両2枚目で幕内復帰を目指す)。さらに秋場所では元横綱朝青龍のおい、豊昇龍が新入幕を果たした。好角家、見る側にとっても「○○の息子、血縁者」は感情移入がしやすい。

冒頭の話題とはかけ離れてきたが、将来に向けて楽しみな話題は間違いない。新型コロナウイルスの影響で秋場所もさまざまな制限の中で開催される。普通に生で相撲観戦はまだしばらく時間がかかる。ならば、勝手にいろんな妄想を膨らませることも相撲を楽しむ手だ。【実藤健一】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

貴景勝の婚約相手の千葉有希奈さん
貴景勝の婚約相手の千葉有希奈さん