WBO世界スーパーフライ級2位井岡一翔(30=Reason大貴)が、再挑戦で日本男子初の4階級制覇を達成した。

同級1位アストン・パリクテ(28=フィリピン)との王座決定戦。長身で強打の強敵を相手に技術を生かして10回1分46秒でTKO勝ちした。

試合を終えた井岡は「感謝の言葉しかない。支えてきてくれた人にこの勝利を捧げたい。このベルトを取るためにすべてを懸けてきた。日本の地で4階級制覇できてうれしい。久しぶりに日本のリングに立って背中を押してもらった」と声をはずませた。

1度引退から昨年の4階級初挑戦は失敗も、2年2カ月ぶりの日本で令和初の新王者にもなった。世界戦通算15勝目で具志堅を抜き、国内最多記録も更新。今後は海外を舞台にビッグマッチを目標にする。

井岡がついに4本目のベルトつかみとった。昨年大みそかの復帰2戦目の初挑戦は1-2の判定負け。すぐに訪れた再挑戦のチャンス。それも2年2カ月ぶりとなるホームの日本で、令和になって7人目の挑戦で新王者にも輝いた。

30歳の大台初戦に「ラストチャンス」と、決意を胸にしてのリングだった。8年前の世界初挑戦から指導するイスマエル・サラス・トレーナーもその決意は感じていた。1度は失敗したが「近道を選ばないのが成功の道」と、井岡の発したこの言葉に勝利を確信していた。

4月20日から10日まで米ラスベガスで最長8週間キャンプした。169・5センチと長身で強打のパリクテ対策を徹底して練習した。パリクテとは4・1センチ差も、180センチある双子の米国代表らを相手に、110回のスパーリングをこなしてきた。

パリクテは上から打ち下ろし、ラビット気味に頭へガンガン打ち込んでくる。その対策には10センチ以上の厚底シューズを特注。履くのはミットを持つサラス・トレーナー。パンチを受けるだけでなく、まき割りのようにミットを振り下ろし、打ち下ろし対策を実践してきた。

サラス・トレーナーは「パリクテは後半落ちる。パワーはすごいが、技術とフィットネスで殺せる」と話していた。約400メートルの坂道ダッシュ10本で心拍数は214まで記録して体力アップ。井岡も「質のいい充実したトレーニングで自信を持って臨める」と手応え十分だった。

13日には50戦50勝無敗で5階級制覇のメイウェザーと対面し、「5階級を狙え」とエールを送られた。「人間パワースポット」というあこがれの人。「自分を信じろ」と同じ考えをアドバイスされたことも、大きな力になっていた。

昨年大みそかから井岡を含め日本勢は黒星続き。井上の実質2団体統一戦、田中と田口の日本人対決を除き、日本人の挑戦は11連敗だった。世界戦15勝目で具志堅を抜いて日本人最多勝利も更新。当時最速の3階級制覇も「海外では無名だった」と振り返る井岡。日本人初の看板を手にし、現役復帰の最大の目標である海外でビッグマッチを目指す。