WBO世界フライ級3位中谷潤人(22=M・T)が2度延期の末に世界初挑戦で世界王座をつかんだ。同級1位ジーメル・マグラモ(26=フィリピン)に8回2分10秒、KO勝ちをおさめた。ダウン経験のない相手を左ボディーからの左フックでダメージを与え、左右の連打でキャンバスに沈めた。コロナ禍で外国選手を招いた国内初の世界戦でデビュー21連勝(16KO)。中1で世界を目指し、中卒で単身米国修行で目指した目標を達成した。一家挙げてのサポートへも恩返しを果たせた。2年ぶりの新王者誕生で、国内男子の現役世界王者は7人となった。

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◆中谷潤人(なかたに・じゅんと)

▽礼儀の空手 1998年(平10)1月2日、三重・東員町生まれ。両親が礼儀作法を学ばせるため、小3から自営する飲食店の常連で師範の極真空手道場に通わせた。小6で143センチに1度も勝てず。

▽目標ロペス 常連に体重別のボクシングを勧められ、テレビでも見て興味を持つ。東員二中1年から桑名のKOZOジム入門。3度世界挑戦の石井広三会長が、世界目指して右利きをサウスポーにさせた。リカルド・ロペス(メキシコ)にあこがれ、U15全国大会では中2、3年と連覇。

▽単身渡米 石井会長が中3時に交通事故死し、中卒と同時に単身米国修行を決断した。「高校はあとで行ける」と反対の両親を説得。石井会長が師事したマック・クリハラ・トレーナーに3週間指導を受け、試合にも勝った。

▽ルディ師匠 その後はルディ・エルナンデス・トレーナー宅にホームステイし、週6日スパーで鍛えられた。岡部大介トレーナーにも指導を受け、3カ月おきに日米往来して米国を含めてアマ14勝2敗。プロでも米国でのスパーで強化してきた。

▽デビュー 新人王出場のため、16歳で岡部トレーナーに紹介されたM・Tジムに入門する。17歳になった15年4月に岐阜で1回TKO勝ちしてプロデビュー。16年に東日本フライ級新人王でMVP、全日本新人王も制す。

▽階段確実 17年に初代日本同級ユース王座、19年に日本同級王座を獲得した。東洋太平洋王座挑戦の代わりに、前哨戦で元世界王者メリンド(フィリピン)に6回TKO勝ち。

▽愛の拳士 三重時代の常連から「愛の拳士」の愛称をもらう。知人が描いてくれたイラストをトレードマークに、三重に約200人の後援会がある。趣味は海釣り、卓球、バスケットボール。171センチ、普段は60キロ。両親と弟の4人家族。