平幕の北勝富士(25=八角)が、埼玉栄高相撲部の先輩で大関の豪栄道から3度目の対戦で初白星を挙げた。左下手でまわしを引き、相手の上手を切ると、豪栄道の体を正面に置いて押し倒した。

 「(左下手が)入った時に『もらったな』と思ったけど、やっぱり(豪栄道の)捨て身の首投げがあると思って。あそこでそのまま出て行くと、食らう。いい形になった時こそ、最後に落とし穴があるんです」。対戦前に相手の取り口を必ず研究する男が、会心の一番を冷静に振り返った。

 豪栄道は埼玉栄高相撲部出身では出世頭の大先輩だ。「サカエのOBは全員、沢井豪太郎(豪栄道の本名)という人を、1番強い人を目標にするんです」という。前日夜、同高相撲部の山田監督に電話をかけ、勝ち越しを報告すると、豪栄道戦に向け「遠慮するな。そろそろ、本当に勝てるぞ」とハッパを掛けられた。「いつも、自分が落ち込んでいる時に電話をくださるんです。先場所は左手首を痛めて負けが込んだときに電話をくれて…。その時は泣いちゃいました」。そんな恩師の言葉に背中を押された。

 2敗を守り、勝ち残りで見守った結びの一番で白鵬が敗れた。残り4日でトップと1差。優勝の可能性を質問されると「いやいやいや、全然、全然、全然。僕なんかまだ鼻くそなんで。(その質問は)14日目ぐらいに言ってくださいよ」と、苦笑いで話題を必死でそらした。まずは、あと1番に迫った自己最高勝利、今年の夏場所に並ぶ10勝を目指す。