関脇貴景勝(22=千賀ノ浦)が5敗目を喫し、10勝以上が目安とされる大関昇進へ後がなくなった。鋭い出足が影を潜め、平幕逸ノ城にはたき込まれた。千秋楽は、かど番脱出へあと1勝としている大関栃ノ心との顔合わせ。勝てば昇進へ前進し、負ければ2場所連続で見送られる可能性が高い。栃ノ心は敗れると大関から陥落する。

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はたかれるかもしれない-。そんな気持ちで立ったのだろう。その時点で貴景勝は負けていた。前日の高安戦はもちろん、ここまでどんな相撲を取って番付を上げてきたのか。その自分の相撲を大事な一番を前に見失い、もろ手突きでフワッと立ってしまった。確かに今場所の逸ノ城は、今までと違う。だから、ここまで7勝2敗の合口の良さは頭から外したとしても、1発でとは言わないまでも当たって2発、3発で持っていくぐらいの気概がほしかった。勝って2ケタにという星勘定が頭にチラついても、おかしくない精神状態だと思うが、そう簡単に上がれないのが大関の重みなんだ。千秋楽は大関の看板を守れるか崖っぷちの栃ノ心戦だ。栃ノ心が「オレは大関、相手はまだ関脇だ」というプライドを持って戦えるか。はね返された時、貴景勝は大関の重みを思い知らされる。栃ノ心は相撲人生の縮図の一番。看板をかけた大一番になる。(日刊スポーツ評論家・高砂浦五郎=元大関朝潮)