ついに、この日がやってきた。モンゴル出身のバトツェツェゲ・オチルサイハン改め旭富士(23=伊勢ケ浜)が3日目の11日に待ちに待ったデビューを果たした。

取材時に、最も印象的だったのは彼の再現性と修正力の高さだ。ある日、横綱照ノ富士(現・伊勢ケ浜親方)が申し合い稽古をしていたオチルに「上手が深い、もっと浅く取れ」と助言した。すると次の相撲では、深すぎず浅すぎず、絶妙な位置で右の上手を取った。そこから寄り、投げと自由自在に攻める姿に、稽古を見ていた横綱がわずかに顔をほころばせたように見えた。

初めて見たときの衝撃は忘れられない。22年秋。新入幕間近の熱海富士の調子を取材しに伊勢ケ浜部屋に来たつもりが、土俵で目を奪われたのは熱海富士と相撲を取る黒まわしの青年だった。押してもよし、投げてもよし、組んでもよし。名鑑をいくらめくっても名前が見当たらない。正体不明の力士が土俵を支配していた。

稽古後に「すごく強いですね。お名前は何ていうんですか?」と問いかけた。当時はまだ研修生。記者から興味を持たれたことがさぞやうれしかったのか、照れたように満面の笑みを浮かべて「名乗るほどの者じゃありませんよぉ~」と陽気な声を上げた。

同世代の熱海富士や尊富士の稽古相手として、1日40番、50番取るのも珍しくなかった。稽古後も黙々と筋トレに励み、片手で40キロを超えるダンベルを軽々と持ち上げる。すべては、この日のためだった。晴れてデビューを果たした未来の大器。「史上最強の新弟子」の今後に期待が膨らむばかりだ。【22~24年大相撲担当=平山連】

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