日本人はミュージカルが好きだ。

 興行ランキングでも顕著だ。「レ・ミゼラブル」が12年の全米興業で18位なのに対し、翌年公開の日本では洋画2位。17年、日本では洋画8位のヒットとなった「ラ・ラ・ランド」は、同年の全米ランクでは20位に止まっている。「グレイテスト・ショーマン」に至っては17年の全米18位、翌年の日本2位と大差が付いた。

 ちょうど10年前に全米14位となった「マンマミーア!」も日本では翌年度8位にランクインした。その続編「-ヒア・ウィー・ゴー」が24日に公開される。

 日本人の感情表現は抑制的だと言われている。だからこそ、その対極にあるミュージカルが好きなのかもしれない。登場人物がいきなり歌い出すと、映画館の暗闇の中でもかなり照れくさいものだが、今作の静かな始まりはすっと入っていきやすい。

 エーゲ海の美しい島。前作のエンドロールで流れていた「サンキュー・フォー・ザ・ミュージック」を同じソフィ役アマンダ・セイフライドがアカペラで歌う。「マリーゴールド・ホテルで会いましょう」(13年)のオル・パーカー監督は、前作の余韻に幕開けをピタリと重ねている。

 前作。同じ島で結婚式を挙げたソフィーは、シングル・マザーの母親ドナ(メリル・ストリープ)の日記から3人の「パパ候補」がいることを知り、招待状を送る。バージンロードを父親と歩きたいという願い。3人の男性はドナとの再会を胸に20年ぶりに島にやってきた。

 今作はその10年後。亡くなった母ドナの夢だったホテル開業を控えたソフィーは、3人のパパ候補に再びオープニング・パーティの招待状を送る。この現代部分と、若き日のドナを描く過去部分の二重構造。時系列で言えば、前作を挟み込むように進行する。

 大学卒業間もない若きドナ。3人の男性との出会いと別れ、そして島にやってきたいきさつ…奔放に見えた母の純心、3人の男性とのやむにやまれなかった事情が明らかになる。

 そしてパーティー当日には再び奇跡が重なって…。

 オリジナルキャストの全員集合、再びのABBAミュージックの連打-てらいのない全開モードがこの映画の魅力だ。

 大道具、小道具をふんだんに使い、アクロバティックな動きで魅せる「恋のウォータールー」。ダンサー満載の船団を空撮でなめる「ダンシング・クイーン」。舞台ではできない映画の力を見せつける。

 祖母ルビー役シェールは見た目ちょっと若すぎるが、アンディ・ガルシアとのデュエット「悲しきフェルナンド」は見どころのひとつだ。そして死んだはずのメリル・ストリープにもしっかりと見せ場が用意されている。

 照れを捨て、素直にボルテージを上げた方がしっかり楽しめる作品だ。

【相原斎】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「映画な生活」)

「マンマミーア! ヒア・ウィー・ゴー」の1場面 (C)Universal Pictures
「マンマミーア! ヒア・ウィー・ゴー」の1場面 (C)Universal Pictures
「マンマミーア! ヒア・ウィー・ゴー」の1場面 (C)Universal Pictures
「マンマミーア! ヒア・ウィー・ゴー」の1場面 (C)Universal Pictures