「第60回上方漫才大賞」(4月12日)は銀シャリが受賞した。何年も前に受賞していておかしくない実力者だけに、堂々の大賞だ。実際、橋本直(44)鰻和弘(41)いずれもが「大賞はずっと欲しかった」と本音を明かした。

笑い飯は銀シャリが慕う先輩漫才師。その西田は後輩の橋本から「どうやったら大賞に手が届くんでしょうか?」と相談されていたという。「いつ取ってもおかしくない。時間の問題やろ」と銀シャリの実力を認めていたが、皮肉なことに、昨年は笑い飯が2度目の受賞。しかも、受賞が内定しても発表当日まで大賞受賞者は周囲にそのことを漏らしてはいけないルールがある。西田から「いや、今年は俺らが大賞やねん」とは言えない。1年前の銀シャリは、相当複雑な思いで笑い飯の笑顔を見守っていたはずだ。

そんな思いも手伝って、今年の銀シャリは満面の笑み。ちょうどコンビ結成から20年の節目で全国ツアーを控えるタイミングとあって、最高の気分だったろう。橋本は受賞後の会見で「ホッとしました」と肩の荷を下ろしたような表情を浮かべた。

銀シャリが大賞受賞の知らせを聞いたのは、発表の約1カ月前。跳び上がるほどうれしかったはずだが、周囲に受賞を伝えることは許されない。おしゃべりな芸人にとって、これがどんなに苦痛なことか。

この時期になると毎年、多くの漫才師が「大賞は誰?」と気にする。銀シャリだって「ことしは大賞でしょ?」「お前らやろ?」と先輩・後輩からツッコまれる。「はい、俺たちです」とはもちろん言えない。といって「いや、俺たちではありません」と言えばウソをつくことになる。それもできない。

結果、徹底的にトボけるしかない。「え? 何のことですか?」こうして逃げるのが一番。

上方漫才大賞はM-1グランプリなどと違って、1年間通じての活動を評価されるものだから、芸人同士で「お前らちゃうか?」「いや、お前らこそ怪しい」と激しいスパイ合戦になる。

発表の日の午前、銀シャリはなんばグランド花月(NGK)の出番があった。楽屋にはテンダラー、スーパーマラドーナらの先輩芸人が。そこへ、鰻はきれいに散髪した髪で現れた。「きれいに散髪して、もう大賞で決まりやな!」と図星をつかれたが、それでも笑ってごまかした。

橋本はそれでも1週間前には妻にだけはそっと伝え、母親には当日まで黙っていたという。「こんなに秘密を守ったのは『探偵!ナイトスクープ』の探偵に抜てきされた際『誰にも言うな』とクギを刺されて以来です」と橋本は苦笑した。

この何年かは苦しい思いもしたが、晴れて銀シャリは上方漫才大賞の受賞者に名を連ねた。おめでとう!【三宅敏】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「ナニワのベテラン走る~ミナミヘキタヘ」)