放映中の日本テレビ系ドラマ「ブラッシュアップライフ」、やられたなと思う業界人は多いはず。とにかくそのアイデアと脚本が素晴らしい。平凡な人生をもう1度やり直す平凡な女性のお話とあるが、このやり直すというのがポイントである。1度は友達と議論したのではないかと思われる人生何週目のお話。安藤サクラ演じる麻美が徳を積むため(徳を積むことで生まれ変わりがよくなる)に何度も何度も人生をやり直す。

今月19日放送の第7話の段階で既に4回目の生まれ変わり。職業も、市役所職員からはじまり、薬剤師、テレビ局プロデューサー、研究医とコロコロと変わる。何回目かの人生に都度異なる職業、どこか既視感があると思ったらドラゴンクエストなどに代表されるロールプレーイングゲーム(RPG)に近いのではなかろうか。

1度クリアした後に、職業を変えてもう1度プレーするといった具合である。また何が起こるか事前にわかっているので2回目以降はサクサクと進むが、ターニングポイントとなるミッションを毎回クリアする必要があり、そこもまたRPGっぽい。途中から多少コントっぽい設定にはなるが、絶妙なバランスでドラマとしても成立している。脚本を書いているのは芸人としても引っ張りだこのバカリズム、恐るべき才能である。

さて、そこで今回紹介したいのは主演を務める安藤サクラ(37)。キネマ旬報のオールタイム・ベスト10ではなんと8位にランクイン。同じく8位に田中絹代や夏目雅子が並ぶことから説明不要の大女優と言っていいだろう。両親は奥田瑛二と安藤和津、映画「愛のむきだし」にはじまり「ケンタとジュンとカヨちゃんの国」「かぞくのくに」「0・5ミリ」「百円の恋」と話題作に次々に出演した後、朝ドラ「まんぷく」で主演、さらにパルム・ドール受賞となった「万引き家族」で世界的にも評価される。

本作では、どこかフワフワと作品の中に浮遊しているように感じる。物語を支配するタイプの主演俳優もいるが、それとはまた違い作品の中に違和感なく入っていくタイプだろうか。どこまでが本人でどこからが役か区別がつかない。カメレオン俳優かといえばそうでもなく、また違ったタイプの俳優である。

言葉にうまく表現できないが、彼女の演技を毎週リアルタイムで見られるのは同じ時代に生まれてきてとても幸せなことだと感じる。最後になったが、安藤サクラにバカリズム、才能ももちろんだが、そのどこか力の抜けたひょうひょうとした感じから、間違いなく人生何度目かだと思う。その2人が作る「ブラッシュアップライフ」、今後の展開に大いに期待です。

◆谷健二(たに・けんじ)1976年(昭51)、京都府出身。大学でデザインを専攻後、映画の世界を夢見て上京。多数の自主映画に携わる。その後、広告代理店に勤め、約9年間自動車会社のウェブマーケティングを担当。14年に映画「リュウセイ」の監督を機にフリーとなる。映画以外にもCMやドラマ、舞台演出に映画本の出版など多岐にわたって活動中。また、カレー好きが高じて青山でカレー&バーも経営している。昨年11月には俳優藤原大祐主演の最新作「追想ジャーニー」を公開した。

(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「映画監督・谷健二の俳優研究所」)