女優白須慶子(32)が舞台「雨と夢のあとに」(9日~10日、東京・赤羽会館講堂)に出演する。作家柳美里の小説が原作。妻を亡くした主人公のシンガー・ソングライター(鈴木有太)が、台湾へ幻のチョウを探しに行き、大きな穴に転落する。小学6年の1人娘を残して死ぬわけにいかない主人公は無事に帰国するが、白須演じる霊感の強い隣人(小柳暁子)に幽霊であることを見破られてしまう。幽霊であることを娘に隠して生活を続ける主人公、そして暁子も大きな秘密を抱えている。

 白須は「人間の優しさや、思いの深さについて考えさせてくれる作品です。霊感のある役なのですが、私は健康優良児なので、はかなげに見えるように役作りしています(笑い)。稽古が楽しいです」。08年にNHK「花の誇り」で女優デビュー以来、ドラマ、映画を中心に活動してきたが、近年は舞台でも積極的に活動している。「以前は舞台に出る時は『声を張らなくちゃ』と思っていたけど、今は『このトーンで届く』と余裕が出てきた。ドラマならアップで抜いて撮ってくれるところでも、舞台だと会場の1番遠くのお客さんにまで届く芝居をしなくちゃいけない。その加減の難しいところが、すごく勉強になります」と笑顔を見せた。

 先月はベトナム・ハノイで舞台「葵上(あおいのうえ)-源氏物語ー」に出演。来年2月に東京・築地ブディストホールで再演される。「今年は6月にはドイツで舞台に出て来たんですが、海外でお芝居をすると、日本にいる時とは違うことを感じるようになって視野が広がった気がします。それを自分のお芝居に生かすのが、今の課題です」と目的意識をしっかりと持っている。

 現在32歳。「若手という立場ではなくなったのは、よく分かっています。実際、後厄(あとやく)ですし(笑い)。役者は若さだけが売りじゃないし、それぞれの年齢に合った役をできるように頑張るだけです」と言う。山梨の都留市出身。「やまなし大使」「つる大使」などを務め、山梨県内のイベントに出席することも多い。「早く、リニアモーターカーが開通してほしいですね。そうすれば山梨は、完全に通勤圏ですから」と笑う。今年1年間を漢字に例えると「疾」。「『疾走』の『疾』です。4カ月間丸々、1日も休めない時がありました。だけど、それはありがたいこと。その忙しさを自分の糧にして、もう1度、自分の演技を見つめ直したい」と話した。