人気小説「コーヒーが冷めないうちに」が映画化され、有村架純(25)が主演を務めることが8日、分かった。店内のある席に座ると、望んだ通りの時間に戻ることができる喫茶店「フニクリフニクラ」を舞台に繰り広げられる心温まる奇跡を描く。有村は、その喫茶店で働き、タイムスリップのきっかけとなるコーヒーを淹(い)れる主人公、時田数(ときた・かず)を演じる。

 「コーヒーが冷めないうちに」は、脚本家で演出家の川口俊和氏が、主宰する劇団で舞台化した作品を川口氏が15年に小説化。続いて17年に発表した「この嘘(うそ)がばれないうちに」と合わせて累計発行部数84万部のベストセラーだ。

 恋愛や夫婦愛、家族愛などをめぐる4つのエピソードが描かれる。数に思いを寄せる美大生や、留学を決めたエンジニアとその幼なじみ、若年性健忘症に悩む女性とその夫、実家を出て自分で店を経営する女性とその妹、フニクリフニクラを経営する数のいとこ、店に現れる謎の女性ら、さまざまな世代が登場する。それぞれが悩みや秘めた思いを抱えており、時間をさかのぼることができるフニクリフニクラを訪れる。数によってコーヒーがカップに注がれてから冷めるまでの間、望んだ通りの時間に移動し、さまざまな思いを感じていく姿が描かれる。

 有村は「自分にしかできない自分の仕事を、彼女はどう感じているのか、人々の人生に触れるたび、自問自答しながら、彼女の瞳の奥にあるものが見えるように繊細に紡いでいければいいなと思っています」と話している。

 川口氏は「自分の作品が映画になることは夢ではありましたが、まさか現実になるとは。これが夢なのだとしたら、せめてエンディングを見届けるまで冷めないで欲しい」と話す。映画初挑戦となる塚原あゆ子監督がメガホンをとる。東宝配給で9月21日公開。

 ◆映画「コーヒーが冷めないうちに」 喫茶店「フニクリフニクラ」には、ある席に座ると、望んだ時間に戻れるという奇妙な都市伝説があった。さらにいくつかのルールもあった。過去に戻っても、この店を訪れたことのない人には会えず、努力しても現実は変わらず、戻れるのはコーヒーをカップに注いでから冷めてしまうまでの間だけなどのルールだ。全てのルールを守った時、優しい奇跡が舞い降りる。