齋藤飛鳥(24)の乃木坂46卒業コンサートが5月17、18日に東京ドームで行われた。昨年末に一度卒業し、数カ月ぶりにグループに合流して臨んだステージ。モチベーションのコントロールが難しい部分もあったはずだが、ベストのパフォーマンスを追い求めた。ライブへの強いこだわりが随所に現れた構成で、多くのファンを魅了した。

まず2日間のセットリストを見比べても、まるで内容の違うコンサートだった。2日間それぞれ31曲ずつで構成。同じ曲を同じ曲順で披露したのは4曲目の「ハウス!」と5曲目の「ダンケシェーン」、9曲目の「扇風機」の3曲のみ。2日間に共通してパフォーマンスした曲は他にも数曲あるが、ユニットメンバーやバンド演奏の有無、衣装などの演出を変えているものが多かった。

齋藤は主役として全曲出ずっぱりだった。1日目と2日目を違う内容にすればするほど、当然覚える曲数や立ち位置などが増えていくが、自ら「せっかくだから全然違うセットリストにしたい」と希望したという。

3月29日発売の最新シングル「人は夢を二度見る」を後輩たちとパフォーマンスしたことも、ファンを驚かせた。2日目の終盤、「次は、この曲を一緒に歌わせていただきたいと思います。それでは聴いてください。『人は夢を二度見る』」と涙しながら伝えると、会場はどよめきに包まれた。

昨年末でグループから離れたため、齋藤は「人は夢を二度見る」に参加していない。もちろん音楽番組やMVにも登場していない。この日の、この時だけの1回限りのパフォーマンスのために、いちから振り付けをマスターした。サビでスカートの裾を持つ独特なステップを踏むなど、難易度の高いダンスだ。当初はセットリストに入っていなかったが、本番が迫る中でやはり齋藤が希望し、披露が決まったという。相当な負担が掛かったはずだが、当の本人は「せっかくだから何かしたいな、と思って」とサラリ。11年間の積み重ねがなせる技だろう。

2日間とも披露したユニット曲「他の星から」にもこだわりがあふれていた。卒業した西野七瀬がセンターを務める人気ナンバーだが、齋藤はオリジナルメンバーではない。特に親しかった後輩、遠藤さくら(21)とあえて2人でパフォーマンスした。「インフルエンサー」「シンクロニシティ」のレコード大賞受賞曲でも知られる振付師Seishiro氏が手がけたオリジナルダンス(当然これもいちから覚えたはずだ)を、超小顔でスレンダーな長い手足を持つ2人が一心不乱に踊る。ステージ上には異世界のような空間が広がっていた。

他にも得意のドラムを演奏したり、3~5期生それぞれの期別曲をセンターでパフォーマンスしたりと、この2日間のためにいかに努力をしたのか、想像せずにはいられないような内容だった。2日目アンコールのソロ曲「硬い殻のように抱きしめたい」は、大げさではなく過去一番の声量、抑揚のある歌声だったように聞こえた。ライブリハーサルの前から、ボイストレーニングを重ねたという。最後まで妥協を許さなかった。

「人は夢を二度見る」の披露前、メンバーたちに向かって「乃木坂をよろしくね」と声を震わせてエールを送った。センターとして背中で見せつつ、言葉でも奮い立たせた。ファンを満足させただけではない。13歳で加入して絶対的エースにまで上り詰めたレジェンドがグループに残したものは、あまりにも大きい。【横山慧】