第38回日刊スポーツ映画大賞・石原裕次郎賞が28日に発表された。「国宝」の李相日監督(51)は3年ぶり2回目の監督賞。「国宝」は作品賞など史上最多6冠の受賞ラッシュとなった。
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李相日監督は「実感に、まだ時間がかかる」と語った。800ページを超えた吉田修一氏(57)原作の映像化自体、渡辺謙(66)が「誰もできないと思った」と語ったように不可能とみられていた。同監督は膨大な原作から、10年の監督作「悪人」公開時に映画化を構想しながら実現できなかった、歌舞伎の女形の一代記を「抽出し濃度を上げることから出発すれば1つの映画として確立できる」と踏んだ。
「3時間はかかる」上、テーマが歌舞伎で作品規模も大きくなり、見積もった製作費は15億円程度。企画を売り込んだテレビ各局も、首を縦には振らなかった。それでも、製作が正式に決まる前から吉沢にオファーし、歌舞伎の稽古から着手。「悪人」に主演した深津絵里(52)の後輩で、マネジメントサイドと信頼関係があったからこそ、なせた業だった。「NHK大河ドラマ『青天を衝け』をやる前で今のような地位にもいなかった彼が、着実にステップアップしてくれたのも大きい」と振り返った。
16年「怒り」のオーディションで「美しさは必要ない」と落とした吉沢ありきで企画を立ち上げたのは、なぜか? 吉沢本人が聞いても答えなかったという理由を問うと、こう答えた。
「美しいだけでなく、自分の外的容貌をどこか突き放して見られる客観性がある。目をいくらのぞいても底が見えない湖のような奥行きがある人しか、喜久雄を体現できないと思った」
「作品が持つ運命がある」。信じ合ったからこそ結ばれた縁が、結実した。【村上幸将】
◆李相日(り・さんいる)1974年(昭49)1月6日、新潟県生まれ。神奈川大経済学部卒業後、日本映画学校(現日本映画大)入学。卒業制作「青~chong~」がPFFで4冠を受賞しデビュー。日刊スポーツ映画大賞では、日本アカデミー賞最優秀作品賞を受賞した06年「フラガール」が作品賞に輝いた。10年「悪人」が作品賞など3冠。22年「流浪の月」で初の監督賞。
◆昨年「侍タイムスリッパー」で作品賞、監督賞の安田淳一監督(58) 昨年末「李監督が『国宝』という作品を完成されたらしい」とのうわさを耳にした時、「お皿やつぼでどんな映画を撮られたのだろう?」と、とんちんかん想像を膨らませた自分を殴ってやりたい(笑い)。作品の持つ圧巻の美と魂を打つ物語に魅了されました。素晴らしいお仕事ぶりに最大限の敬意を表します。



