将棋の最年少5冠、藤井聡太竜王(王位・叡王・王将・棋聖=20)が広瀬章人八段(35)の挑戦を受ける、第35期竜王戦7番勝負第5局が25、26の両日、福岡県福津市の宮地嶽(みやじだけ)神社で行われ、先手の広瀬が133手で勝ち、シリーズ対戦成績を2勝3敗とした。藤井はタイトル戦の7番勝負で、初めて2敗を喫した。第6局は12月2、3日に鹿児島県指宿市「指宿白水館」で行われる。藤井は初防衛、広瀬は4期ぶりの竜王奪還を目指す。

戦型は第3局と同じ相掛かり。第3局は広瀬が終盤の入り口まで優位に進めていたが、終盤に逆転負け。同じ戦型だが、さらに研究した手をぶつけてきた。藤井が時間をかけて対応する展開が続き、1日目終了時点では、消費時間で約2時間のハンディを負った。2日目は難解な局面が続く大激戦。一時、優勢を築いた藤井だったが、逆転負け。最終盤には前傾姿勢から何度も首をガクッと落とす“敗戦モード”のアクションを起こした。

終局後、藤井は「ちょっと苦しい展開になってしまった。カウンターを狙ってと思ったけど、急ぎ過ぎて受け止められてしまった」と振り返った。

藤井はタイトル戦に出場したのは11度目で、これまでいずれのシリーズも制しているが、タイトル戦の7番勝負で2敗したのは初めて。タイトル全8冠制覇への期待も高まるが、過酷だ。新たにタイトルを獲得するだけではなく、保持するタイトルの防衛戦にもすべて勝利しなければいけない。

22年度、保持する5冠以外に奪取の可能性が残るのは棋王戦のみ。敗者復活戦に回った藤井は4連勝しなければ、挑戦権を獲得できない。勝負の12月になるが、竜王戦7番勝負第6局に向け「気を取り直して、がんばりたい」。初体験の「2敗」をバネにする。【松浦隆司】