熊 「天高く馬肥ゆる秋」ということわざはよく知られているけど、馬のことわざって他にもあるよな。

いまにし亭(以下い) 競馬をやる人間が心に留めておきたいのは「人間万事塞翁が馬」(にんげんばんじさいおうがうま)だな。

熊 どういうこと?

い 古い中国で生まれた言葉だ。老人が飼っていた馬が逃げた。馬が暮らしに欠かせない土地だから災難。しかし、何カ月かたって、この馬が質のいい馬をたくさん連れて帰ってきた。これはよかったと近所の人が言うと「いやいや」と首を振る。しばらく後に、連れてきた馬に乗っていた息子が落馬して大けがを負った。「災難でしたね」と言われるとまたまた「いやいや」。今度は戦争が起き、息子と同年配の者はみんな戦争へかり出され、ほとんどが戦死。けがでいくさに行かなかった息子は死なずにすんだ。この話から「いいこと、悪いことは互い違いにやってくる、定まりがたい」の意味で使われる。

熊 「禍福(いいこと、悪いこと)は糾(あざな)える縄のごとし」。

い 馬券も当たったり、当たらなかったり。当たらないことが続いても、そのうち当たると思えば、心休まる。

【今西和弘】