「真昼の決闘(High Noon)」。

これは1952年に公開された映画のタイトルだ。ゲイリー・クーパー扮(ふん)する保安官が、4人の無法者に1人で立ち向かうリアルな姿を描いた西部劇だった。翌年のアカデミー賞で主演男優賞など4部門を受賞。不朽の名作として知られている。

94年のワールドカップ(W杯)アメリカ大会決勝、ブラジル対イタリア戦は現地時間7月17日の午後0時半すぎの開始となった。炎天下の最中(さなか)。欧州の夜間、いわゆる「ゴールデンタイム」に合わせられた。

会場となったロサンゼルス郊外パサデナにあるローズボウルスタジアムは、気温40度。それゆえに「真昼の決闘」と呼ばれた。

4日、ラウンド16のブラジル対ノルウェー戦を翌日に控え、公式会見がニューヨーク・ニュージャージースタジアムであった。出席したのはブラジルMFブルーノ・ギマランイス(28=ニューカッスル)だった。日本戦で決勝点を演出し、今大会4アシスト。ランキングで2位に付けている。

そのギマランイスが「真昼の決闘」を思い起こさせるような決意を口にした。ノルウェーの司令塔で3アシストを記録するウーデゴールとの対決について質問された時だった。

「もちろんサッカーはチームスポーツだが、個人の対決も非常に重要なんだ。サッカーでは一瞬のプレーで結果が決まることがある。常に集中していなければならない」

どこか荒野で銃を向けて対峙(たいじ)する2人の男の姿が頭に浮かんだ。「名手」たちの姿が。サッカーは個人スポーツではない。例えば、両チームのエース同士がクローズアップされた時など「そこは個人でやっているわけではないですから」とクギを刺されることがある。

だが、ギマランイスが「個人の対決が大事」と説いたのは印象的だった。言い得て妙とはこのことか。サッカーとは、ピッチ上で繰り広げられるデュエル(決闘)の積み上げが、最後にチームに集約されて勝負を決するとも言える。

何よりギラついた目も“真昼の決闘”を思い起こさせるものだった。「この暑さの中でたくさん走るのは大変だけど」。そう断った上で、勝負を決める一手について「瞬間的に、即興的に、ブラジル人らしい感じで」と表現していた。

炎天下の荒野に、ガンマンたちが対峙(たいじ)する。そこは“無法者”たちでなく、ルールを守ったフェアプレーの精神の男たちのもとで決闘が行われる。

風が吹く。カウボーイハットが飛ぶ。その瞬間、勝負を決する一撃が出る-。そんな光景を息をのんで見つめたい。【佐藤隆志】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「サカバカ日誌」)

日本戦で歓喜の叫びをあげるブラジルのブルーノ・ギマランイス(ロイター)
日本戦で歓喜の叫びをあげるブラジルのブルーノ・ギマランイス(ロイター)
ブラジルのブルーノ・ギマランイス(2025年10月13日)
ブラジルのブルーノ・ギマランイス(2025年10月13日)
ウーデゴール(ロイター)
ウーデゴール(ロイター)