仙台渡辺監督(右)と話し込む仙台DFシマオ・マテ(2019年1月31日撮影)
仙台渡辺監督(右)と話し込む仙台DFシマオ・マテ(2019年1月31日撮影)

開幕ダッシュに失敗したJ1ベガルタ仙台が平成最後のホームゲームでガンバ大阪に快勝し、来るべき新時代へ向け反撃態勢を整えた。ルヴァン杯こそ4戦無敗でグループリーグ突破を果たしたが、現在リーグ戦は降格圏の16位に甘んじている。J1最下位レベルの人件費でやりくりしているが、経営規模だけでは計れない無形の力がチームを支えている。

G大阪戦では、やり慣れた3-4-3の布陣を4-4-2に変更して臨むなど、試行錯誤を重ねて勝ち点3をものにした。渡辺晋監督(45)の好采配が奏功した格好だが、陰の立役者がいた。元モザンビーク代表で今季新加入MのFシマオ・マテ(30)だ。この試合ではメンバー外で、プレーで貢献したわけではない。新参者の外国人選手ながら、不協和音が聞こえ始めていたチームを裏でまとめ上げていたのだ。

マテはアフリカ大陸南部に位置するモザンビーク生まれ。同国の英雄でコロンビア代表を務めるカルロス・ケイロス監督に才能を見いだされ、18歳でギリシャの強豪パナシナイコスに引き抜かれた。その後、スペインリーグのレバンテで主将を務めるなどキャリアを積み、中国、カタールと渡り歩いた。ジュリアーナ夫人はイタリア系ブラジル人。ポルトガル語、英語、イタリア語、スペイン語、ギリシャ語を堪能に操るコスモポリタンだ。

メッシ、Cロナウドらスター軍団とのマッチアップで培った対人能力を持つが、世界を渡り歩き、自然と身につけたコミュニケーション能力でチームの絆を深めてきた。何事にもものおじせずに笑顔を絶やさない。

マテ コミュニケーションを取るとき、言語の違いは問題ないし、サッカーをやっているもの同士なら言葉が分からなくても通じ合うことはたくさんある。日本人選手は静かでおとなしいね。海外だったらピッチで要求し合うのは当たり前だし、けんかもする。だけど練習が終わったら、一緒に食事に行ったりするのは当たり前なことなんだ。初めは何を考えているか分からなかったけど、食事に誘ってお酒が少し入ると、ようやく本音で話し始めるんだ。

ベテランMF梁勇基(37)から若手MF椎橋慧也(24)まで、年齢を問わず積極的に食事に誘い出し絆を深めてきた。

3年間在籍したレバンテの経営規模は、仙台と同じくリーグ下位レベルだ。そこで強豪クラブと戦いながら、いかに1部に残留し続けるかのテーマに向かい続けてきた。弱者が強者に挑むメンタリティーを誰よりも知る男が、陰ながらチームを支えている。

ミニゲームでゴールを決め平岡(右)と歓喜するシマオ・マテ。右は石原直(2019年1月31日撮影)
ミニゲームでゴールを決め平岡(右)と歓喜するシマオ・マテ。右は石原直(2019年1月31日撮影)