東京五輪世代が臨むU-23(23歳以下)アジア選手権(タイ)が8日、開幕した。東京五輪世代のU-23日本代表も9日のサウジアラビアとの対戦で、1次リーグ初戦を迎える。

全23選手の中で、昨年12月に行われた東アジアE-1選手権(以下、E-1)に出場した選手は14人。これに同大会後の12月28日に行ったU-22ジャマイカ代表との国際親善試合の活動に参加した選手らを合わせた。MF堂安律やDF冨安健洋、MF久保建英ら海外組が不在ではあるが、本大会を見据えた選手の見極めを進めつつ、昨年末の同大会などで出た課題をどうクリアにしていくかが今回のポイントのひとつになりそうだ。

まず第一に、3バックのシステムでの戦術浸透度を上げること。昨年末のE-1やU-22ジャマイカ代表戦と同様に、今大会も3バックで戦う可能性は高い。しかし、E-1では敗れた韓国戦で肝となる両ウイングバックが完全に抑えられ、全体的に自陣に下がり気味の陣形となったことで前線の選手が孤立。1トップのFWに効果的なボールが入るシーンはほとんどなかった。相手にウイングバック後方と3バックの間にできるスペースを狙われるなど、対策された際にそれを押し返す力をどれだけつけられるか。当然、相手はメンバーの似通った年末の日本の試合を分析して臨んでくる。サウジアラビア、シリア、カタールと1次リーグで当たる強豪との対戦で、連係、そして相手の出方を受けての対応力を磨いてほしい。

次にオーバーエイジ枠の使いどころの見極め。これは本大会へ向けたメンバーを固める上でも、早いうちにはっきりさせておきたい。もう五輪本番まで約7カ月で、今大会が本番前最後の公式戦。基本的に3枠全てを使う可能性が高いと考えると、現システムのどこのポジションにその枠の選手を置くと有効なのか。直近のE-1やU-22ジャマイカ戦なども勘案すると、やはり1トップ、ボランチ、CBのいわゆるセンターラインに1人ずつがいいのではないだろうか。

1トップのFW上田綺世や小川航基はこれまでの働きをみても、キープ力という意味では心もとない部分がある。やはり前線の選手には得点力はもちろん、全体を押し上げるためのタメを作る役割は欠かせない。使えるのであればA代表でも不動のFW大迫勇也が入ったチームは見てみたい。シャドーに入るとみられる堂安や久保とはA代表でもプレーしており、前線3ユニットがA代表仕様となるだけでも、攻撃の迫力は向上するだろう。ボランチには実質的にA代表、五輪代表混合チームとなった南米選手権に出場したMF柴崎岳、E-1に出場した大島僚太、橋本拳人らを推したい。南米選手権やE-1でのこれらの選手の存在感はやはり際だっていた。経験があり、チームを落ち着かせる存在となれる選手がボランチには必要だ。

最後にCBには端的に即戦力、ライバルたちがオーバーエイジ枠を使って入れてくるであろうワールドクラスのアタッカーたちを止めてくれる実力者を入れておくべきだ。4強入りした12年ロンドン五輪にオーバーエイジで出場したDF吉田麻也がそうであったように、ある程度のA代表経験がある選手。年齢的にみても、DF植田直通や畠中槙之輔、三浦弦太あたりがいいかもしれない。

すでに森保監督の頭の中でのオーバーエイジ枠の使いどころは決まっているかもしれないが、そのあたりの意思も今回の大会で見えてくるはず。指揮官は大会初戦を前に「選手には“生き残り”に関しては伝えてある。五輪に向けての競争の場と伝えている」と話した。選手にとっては間違いなく今後の命運を左右する大会。五輪出場権を得ているとはいえ、魂のこもったプレーの中で、今後も戦える選手を見極められる大会になることを願っている。【松尾幸之介】

◆松尾幸之介(まつお・こうのすけ) 1992年(平4)5月14日、大分県大分市生まれ。中学、高校はサッカー部。中学時は陸上部の活動も行い、中学3年時に全国都道府県対抗男子駅伝競走大会やジュニアオリンピック男子800メートルなどに出場。趣味は温泉めぐり。