大阪の中学生年代に注目のクラブチームが誕生する。
25年4月から活動を始めるクラブは「RISEISHA U-15」。その名の通り、履正社高サッカー部の下部組織として、新たに立ち上がったクラブだ。
履正社高は、22年ワールドカップ(W杯)カタール大会代表のFW町野修斗(25=キール)、21年東京五輪代表FW林大地(27=ガンバ大阪)、元日本代表DF田中駿汰(27=セレッソ大阪)らを輩出してきた大阪の強豪校。質の高い選手を育成し、現在もプリンスリーグ関西1部に所属し、高校選手権の大阪大会で5年続けて決勝進出するなど、確かな実力をあげている。
今回U-15世代のクラブチームを発足させるのは、その履正社高での育成をより充実したものにするためだ。03年の同校サッカー部創部から指導してきた平野直樹監督(59)の「世界で活躍する選手を育てたい」という考えを形に近づけるためのプロジェクトとなる。高校年代で結果を出すことも目指すが、重視するのはリーグ戦を通しての成長。より早い段階から良い指導を行うことで、選手育成につなげようとしている。日々の活動は、昨年最新の人工芝に張り替えられたサッカー専用グラウンドで行われる。
新たなクラブの指導体制も充実したものになる。最大の目玉は、監督を務める鴨川幸司さん(54)の存在だ。
鴨川さんはG大阪アカデミーの前身となる釜本FC時代からG大阪の指導に携わり、稲本潤一、橋本英郎、大黒将志、宇佐美貴史、林大地、田中駿汰、堂安律ら数々の選手に関わった指導者。19年いっぱいでG大阪を離れてからの5年間は、JFLのFC TIAMO枚方でアカデミーダイレクター兼ジュニアユース監督を務めてきた。今回はG大阪ジュニアユースのコーチ時代に、監督とコーチの関係だった平野監督から話を受け、ぜひチャレンジしたいと思い、決断した。自身がG大阪ジュニアユース監督の際に、履正社高に進んで成長する選手が多かったことも、前向きに考える要因となった。
鴨川さんは、自身のこれまでの豊富な経験を振り返って、あらためて中学生年代の重要性を感じているという。「ジュニアからトップまで、全カテゴリーで指導者経験をさせてもらってきて、ジュニアユース年代が1番大事なんじゃないかと思っている。頭が柔軟な時期にプレー面はもちろんのこと、物事の考え方を学ぶことで、成長するための意識を植え付けられる」。G大阪を離れて以降、さまざまなレベルやカテゴリーの指導に関われたことで、この年代の指導が選手の将来に大きく影響すると再認識したことも、新たなチャレンジにつながった。
指導において大事にするのは「基礎」だと繰り返す。ただ、基礎といっても単なる技術だけを指すのではなく、その意味は多義にわたる。「もちろん技術的な基礎もあるけど、フィジカルや個人戦術、状況に応じてどういうプレーが必要かという駆け引きの基礎もある」。サッカーというスポーツに求められる多くの要素にアプローチをしていく考えだ。
その中でも常に心がけるのが「詰め込みすぎない」ということ。「チームを強くするのは大事だけど、それで伸びしろがなくなってしまってはいけないと思うんです。コーチの言ったことを参考にしながら、選手が自ら判断してプレーするようになっていかないと。例えば、ベンチから『シュート』と言われてから打っても、タイミングとしては遅い。そんな時は、コーチの声で相手が反応していれば、その逆を取るぐらいのプレーができればいい。コーチの言うことを聞かなくても、自分で結果を出せばいいわけですから。サッカーは判断して、プレーするのが楽しい。自分でサッカーを楽しめる選手に育って欲しいと思います」。目の前の勝利にこだわるのであれば、何から何まで教え込むことが手っ取り早いが、それでは自分で判断できる選手は育たない。必要となるプレーや思考を伝えながら、自立した選手を育てることを意識する。
必要以上に大人の顔色をうかがう子どもが増えている現代においては、意図的に子どもらしい自主性を育んでいくことも考えている。「グラウンドに着いたら『おい、やろうぜ』ってボール蹴り始めるぐらいでいい。でも今の子は、まず『ボール蹴っていいですか』って聞いてくる。コーチに確認するのも悪いことではないけど、勝手にボールを蹴り始めるぐらいのサッカー小僧であって欲しい。最近はまじめ過ぎる選手が多い。『コーチに注意されたらやめればいいやん』みたいな、ずうずうしさも必要だと思う」。やわらかい表情で語った鴨川さんが、新天地でどんな選手、チームを育てていくのか。話を聞くだけで今後が楽しみになった。
1期生となる新中1にはGK3人、フィールドプレーヤー22人の計25人が入ることが決定。まずは少数精鋭でリーグ戦や練習試合で経験を積んでいくことになっている。
また「RISEISHA U-15」も含む「履正社サッカーアカデミー」では、小学生対象のエリートスクールも設立予定。高校やU-15と同じ履正社茨木グラウンドで、毎週木曜日に小3~6年の選手を指導することになっている。選手登録はしないため、所属クラブとの両立も可能。2月から募集を開始し、3月にセレクションを実施する予定となっている。(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「サッカー現場発」)
◆鴨川幸司(かもがわ・こうじ) 1970年(昭45)7月28日、大阪生まれ。G大阪ではジュニアからユースまで幅広く関わり、アカデミーダイレクター、ヘッドオブコーチングも務めた。ジュニアユース監督では高円宮杯で3度日本一に輝き、クラブユース選手権、JFAプレミアカップでも全国制覇した。12年に中国で行われたマンチェスター・ユナイテッド・プレミアカップ世界大会では準優勝。20年からFC TIAMO枚方でアカデミーダイレクター兼ジュニアユース監督。25年1月から現職。




