負けたけれど、最後に強豪イングランドと対戦できてよかった。前回も言ったように、なでしこは修正力がある。次戦まで中5日。敗戦直後はみんな暗くて、次の相手を考えたら、さらに重苦しい雰囲気になる。

8年前もそうだった。1位通過を目指した1次リーグ最終戦で、イングランドに0-2で負けて、トーナメント1回戦の相手が地元ドイツになった。それまで、ドイツには勝ったことがない。試合直後はみんな無口になっていた。しかし翌日から「倒すなら今しかないね」の声が出始めた。みんな心の片隅には「ドイツに勝てっこない」の気持ちはあったが、わざと「いける、いける」と大きい声で言い始めた。

不思議なことに、ドイツ戦直前には「本当にいけそう」とチーム全体で、根拠のない自信にあふれた。「まず前半を0で抑えよう」。ドイツに一方的に攻め込まれたが、11人全員が体をはった。ハーフタイムには「作戦通りだ。この勝負もらった」となり、丸山が決勝点を入れてくれた。

今回は前半を耐えられずに失点したが、次戦こそまず45分間、耐えてほしい。守備から入っていい。相手DFにロングボールを蹴らさないつもりで、FWから食らいつくことが大事だ。走れなくなったら仲間が走ってくれる。粘って耐えると、最後は誰かがなんとかしてくれる。

チーム力を上げるには、細かい作戦、技術、戦術が大事だが、W杯はこれに限らない。信じる気持ち、全員が同じ方向を向けるか。なでしこにはその力がある。(元なでしこジャパンFW、浦和レディース)