新型コロナ禍で実施した、日本代表のオランダ遠征。対戦国カメルーン代表から2人の陽性者と1人の濃厚接触者が出たが、日本の選手・スタッフからは感染者ゼロ。今年初となる9日間の代表活動を13日に終え、16日に帰国した森保一監督(52)らスタッフ全員の陰性も確認された。「ニューノーマル」の時代で海外遠征や国際大会を実施する際の重要ポイントは何か。来夏の東京五輪に向け、各競技が活動を本格化させるうえでのヒントを探った。

   ◇   ◇   ◇

◆検査態勢 合宿中に周知徹底したのは「感染者を出さない、広げない」ことだった。代表選手・スタッフは対戦相手も含め、オランダ入国前に各自で検査を受け、陰性証明書を持参。試合3日前以内にもPCR検査を義務づけた。平井徹競技運営部部長は「最も苦労したのはPCR検査の手配。現地でも感染が拡大していたので大変でした」と語る。合宿地の下見はできなかったが、日本協会の各部署で役割を分担し、現地とオンライン打ち合わせを重ねた。海外遠征時には入念すぎるほどの準備と物資の事前確保が必須となる。

◆現地国の理解 鍵は「うがい・手洗い・マスク」を徹底できるか。ホテルや試合会場の現地スタッフの理解を得て習慣化されていない予防策を浸透させた。宿泊先では各部屋の往来を禁止。スタジアムでは両チームの移動に時間差をつけるなど試合以外では密回避を最優先。平井部長は「基本的なことを徹底するのが大事。日本の規則や考え方と現地の違いはあるが協力を得られた」と感謝した。

◆メディア対応 対面取材が禁止のため、通常100人規模の現地取材陣も今回は数人程度。日本と現地のマイナス7時間差を考慮し、練習前の日本時間午後5時に連日4選手のオンライン対応を設け、公式の写真や映像も期間限定で無料提供した。加藤秀樹広報部部長は「ファンやサポーターに情報を届けることが大事。現地にいるような環境をどう整えるかでした」。

◆ファンサービス 練習見学や試合観戦が不可能な中、オンラインを活用して触れ合う機会を設けた。代表合宿に密着した映像「Team Cam」を公式サイトで無料配信。子どもたちが選手にオンラインで質問するイベントや試合日にオンラインで選手とハイタッチする企画も実施した。

日本協会の田嶋幸三会長は「コロナ禍でどう国際試合をやっていくかは課せられた課題。球技の団体種目がこうやってできたのは大きい」と総括した。9日間で得た知見は、他競技にも還元する。【浜本卓也】