浦和のミハイロ・ペトロビッチ監督(58)が、オフ返上で熊本を訪問した選手たちをたたえた。28日午後に行われたリーグ名古屋戦の前日会見で、FW李、GK西川、DF槙野、GK大谷の4選手が、25日に熊本地震の被災地を訪れたことに言及。「選手が自分たちで考え、行動してくれたことを誇りに思う。貴重なオフを割いて、そういう活動をしてくれたことは、本当に誇りに思います」と話した。

 J1での指揮試合数が300試合を超えているペトロビッチ監督は、東日本大震災が起きた11年も、広島で指揮を執っていた。

 「東日本大震災も日本で経験し、今回熊本地震も日本で見ている。そういった災害の時に、被災者のみなさんが辛抱強く、落ち着いて、苦境を乗り越える頑張りに胸を打たれる。周囲でサポートするみなさんもとても献身的。しかも長期にわたって助けている。そういう日本の国民性を見て、私はいつも学んでいる。欧州の友人によく話します。日本ではこういう時でも落ち着いて、被災者をサポートする体制ができている。だから我々も学ばないといけない、と」。

 広島でも浦和でも、選手たちからは父親のように慕われている。サポーターからも愛されているだけに、大災害にあえぐ日本の国民に寄り添っていたい、という気持ちは強い。

 「東日本大震災当時、福島の原発については、欧州でも大きく報道された。心配した家族、友人からは、早く帰って来いと何度も連絡が来た。そういった連絡に、心が揺らがなかったと言えば、うそになる。でも選手たちやサポーターのみなさんは、日本に残って生活をしている。だから、自分だけが日本を離れるという選択肢はなかった。おそらく、これからもない」。

 だからこそ熊本の被災者に寄り添い、できる限りの支援活動をした選手たちを誇りに思っている。

 西川は「サッカーを知らないおばあちゃんからも、これからは応援すると言っていただきました。いい試合をして勝って、中継やニュースで僕らの姿を見てもらいたい」と言う。ペトロビッチ監督も、そんな選手の思いをくむ。

 オフ明けの26日には、練習終了後に40分もの青空ミーティングを敢行。名古屋戦に向けて手綱を引き締めた。

 「今の浦和は、非常に危険な状況だと思っています。結果を出し、いい流れが続く素晴らしい状況。選手たちのパフォーマンスも称賛に値するものだと思います。ただ、称賛されることで浮かれてしまってはいけない。サッカーは過去の結果で生き残っていけるスポーツではない。常に目の前の試合で結果を出すことで生き残っていける。だからこそ、明日の試合は襟を正し、緊張感を持って、本気で相手を倒しに行かなければならない。今週の練習では、選手たちにそのようなことを伝えました。彼らもしっかり受け止めてくれたと思っています」。

 24日の前節川崎F戦では、攻守の素早い切り替えで相手を敵陣に押し込み続ける「ミシャ・プレス」が猛威を振るった。1-0というスコア以上の内容の良さで「今年の浦和は強い」と印象づけた。

 だからこそ、次の試合が大事になる。熊本の被災者も、選手たちの活躍を待っている。絶対に勝つ。そんな決意をにじませつつ、ペトロビッチ監督はつえをつきながらゆっくりと、会見場を後にした。