鹿島が2-1で川崎Fを延長の末に退け、Jリーグに続く今季国内2冠を果たした。通算でも19冠目達成。そのうち16冠に貢献してきた主将のMF小笠原満男(37)は、試合後に、思いを語った。

 「最後にタイトルをとれてうれしい。この気持ちを全員で持ち続けたい。来シーズンは、さらに強いチームをつくりたいと思います。苦しんだ中で勝ちきってきたことが、良い経験になる。大事なのはここから。内容を見れば、ピンチもある。もっと高いレベルを求めないと。失点しなかったから良かったではない」。

 来季はアジア・チャンピオンズリーグ(ACL)にも、Jリーグ王者として挑む。今季終盤は、CS、クラブW杯、天皇杯と、昨年11月23日を皮切りに、40日間で10戦を戦い抜いた。中2日や中3日の連戦も何度も経験し、8勝2敗。優勝、準優勝、優勝と結果も出してきた。Jリーグでは、年間勝ち点3位からの下克上優勝に満足はせず、クラブW杯決勝でRマドリード(スペイン)相手に2-4と大善戦しても、負けた悔しさが上回った。

 「結果は出たけれど、すごい良い試合をしたわけではない。ACLも(含めて)週に2試合することが、どれくらい続くか分からないけれど、タフになって勝ちきらないといけない」。

 試合序盤から、川崎Fの初タイトルへの気持ちに、押し込まれる展開も多かった。だが、その流れを一瞬で替えたのも小笠原の経験だった。前半19分、相手のファウルに激高。川崎FのMF中村憲剛(36)に対して闘志をむき出しにした。両軍入り乱れる、騒然とした雰囲気。空気は張り詰めた。37歳のベテランの熱い姿勢に、選手らは気持ちがさらに引き締まる。勝利のために、何をすればいいのかを、ピッチの中で伝授する1場面だった。

 「あれも、あえての部分もある。細かいところにこだわって、流れを引き寄せることも大事なこと。そういう駆け引きもチームには必要」。

 後半43分、MFファブリシオ(26)と途中交代には、もちろん納得していない。120分間ピッチに立てなかった悔しさはある。だが、延長前半4分、ファブリシオの試合を決めた勝ち越し弾には、自分が決めた以上に喜びを感じ、感謝した。

 「自分たちは11人だけでプレーしているわけじゃない。ファブリシオもそうだし、同じスタメンでは、ずっと戦ってこなかった。普段の紅白戦をみても、競争があったからこそ、今日2冠を決められた。試合に出られなくても、一生懸命やることを彼が示してくれた」。

 表彰式では天皇杯を日本協会の田嶋幸三会長から受け取った。だが、自身が掲げるのではなく、まずは石井正忠監督を指名。次には今季限りでチームを離れるスタッフ、期限付き移籍の契約が満了するファブリシオらにも中央でカップを掲げさせた。

 来季は神戸からFWペドロ・ジュニオール(29)、新潟からはボランチのMFレオ・シルバ(31)らの加入が決定している。小笠原にとってもチーム内の競争が待っている。「最後までピッチに立てるように勝負していきたい」。20冠に王手をかけ、チームにも自身にも、さらなる強さを求めた。【鎌田直秀】