女子SPで樋口新葉(16=東京・日本橋女学館高)が70・53点で、首位デールマン(カナダ)と0・12点差の2位と好発進した。目標のGPファイナル(12月、名古屋)初進出を狙える位置につけ、記者会見では真剣な表情を貫き、今日4日のフリーを見据えた。

 演技後も、取材エリアでも、会見場でも、樋口の頬は緩むことがなかった。矢継ぎ早の質問に「まだ明日があるので気にしない」「気が抜けない」「小さいミスを明日までに改善したい」と繰り返した。女子で2枠の五輪代表を争う本田、三原との直接対決にも「みんなは(GP)1戦目だったりするけれど、私は(GP)ファイナルに向けて少しでもポイントを上げておきたかった」と世界のライバルを意識した。

 ステップと1つのスピンでレベル3(最高は4)と取りこぼしたが、技術点37・68点は全体2位。後半のルッツ-トーループの連続3回転などを鮮やかに決め「ミスがあっても70点を出せたのはうれしい」と成長を感じた。1万8000人収容の会場に響いたステップ時の手拍子は「緊張と集中でお客さんのことが分からなかった」。それほど自分の演技に入り込んだ。

 3位に入ったGP第1戦ロシア杯で、親交が深く世界選手権2連覇中のメドベージェワ(ロシア)と再会した。たわいのないうわさ話などで盛り上がりながらも、女王が発した「緊張する」というフレーズが印象に残った。「『あ~、人間だな』って。いつも(メドベージェワは)失敗しない。緊張した中でも、ノーミスできるように練習していかないといけない」。11人中9番目の滑走は緊張感がより高まる。それでも張り詰めた雰囲気を楽しむように、堂々と乗り越えた。

 昨季のGPファイナル進出ラインは24点で、2位に入ればその大台に乗る。「本当に明日、全力を出し切りたい」。分かりやすい言葉に、ほとばしる情熱を注ぎ込んだ。【松本航】

 ◆GPシリーズのポイント 6大会のうち各選手・組(ペア、アイスダンス)が出場できるのは最大2大会。ポイントは1位15点、2位13点、3位11点、4位9点、5位7点、6位5点、7位4点、8位3点と設定されており、その合計で上位6人(組)がGPファイナル(12月7日開幕、名古屋)に出場できる。出場2大会とも表彰台争いをすることが、ファイナル進出に近づく条件となる。