トライアスロン本格挑戦1年目の谷真海(35=サントリー)が、初出場初優勝を果たした。

 PTS4(運動機能障がい)女子の谷はスイムをトップ通過。バイクへのトランジションで2位に落ちたものの、バイクで再びトップに立ち1時間18分18秒でゴールした。元世界女王のサリー・ピルビーム(オーストラリア)に32秒の差をつけて快勝。日本選手として初めて世界選手権の頂点に立った。

 陸上走り幅跳びでパラリンピックに3回出場した谷は「瞬発系競技から持久系競技に代わって、練習はきつい」と話していたが、すっかりトライアスリートの顔になった。ゴール直前にはサングラスを外し、右手を掲げて観客の声援に応えた。最後は両手を高々と上げてゴール。日本トライアスロン連合(JTU)のツイッターで「最後まで気持ちも体も切らさず押しきろうと思った。勝つことができて、うれしいです」とコメントした。

 転向を決めたのは「長く続けられる競技だと思ったから」。12年ロンドンパラリンピックに出場後は、20年東京五輪・パラリンピックの招致活動に携わった。13年9月の国際オリンピック委員会(IOC)総会では、最終プレゼンテーションのトップとして登場。障がい者として、東日本大震災の被災者として「スポーツの力」を訴え「招致成功への力」になった。

 「東京大会には何らかの形で参加したい」と話した佐藤真海は、結婚、出産を経て谷真海として戦いの場に戻ってきた。12、13年にも「お試しの」大会出場はあったが、本格挑戦は苦しかった。長距離走はできても、水泳や自転車は「ド素人」。それでも必死で練習した。指導する元日本代表の白戸太朗氏(50)は「厳しい練習でも頑張る。根がアスリートですね」と、谷の精神力に舌を巻いた。

 13年パラ陸上世界選手権の幅跳びで獲得した銅メダルを上回る金メダル。東京パラリンピックの実施種目は未定で、谷のPTS4が行われない可能性もあるが「私が決められることではないし、今は練習するしかない」と話す。「(転向から1年目で)順調な滑り出しができた。もっと強くなれると思うので、強くなってまた世界シリーズに戻ってきたい」と言い切った谷は「スポーツの力」を信じて泳ぎ、漕ぎ、走る。