サッカーワールドカップ(W杯)ロシア大会の日本代表に続け! 視覚障がい者らによる5人制サッカー(ブラインドサッカー)日本代表FPでブラサカ界の「キング」こと黒田智成(39)が、サッカー日本代表から刺激を受けた。8日まで開催された日本選手権では、たまハッサーズ(東京)の得点源として準優勝に貢献。平均年齢32・07歳の“おじさんジャパン”をけん引する日本のエースが、2020年東京パラリンピックでのメダル獲得を誓った。

 ブラサカ日本代表も国民に感動を与える-。04年アテネ・パラリンピックから4大会連続で出場を逃している日本代表は、20年東京大会に開催国枠で初出場する。黒田は「サッカー日本代表から勇気をもらった。次は僕たちが日本中を感動させる。(東京・八王子盲学校の)先生である僕自身が世界一を目指す教材となって、生徒や多くの人に夢や希望を与えたい」と気持ちを新たにした。

 サッカー日本代表(FIFAランク61位)はW杯1次リーグでコロンビア(同16位)を2-1で撃破するなど番狂わせを起こし、前評判を覆して決勝トーナメントに進出した。「サッカーは強豪相手でも何が起こるか分からないのが魅力。ブラサカもそれは同じで、僕たちにも出来ると信じている」と黒田は言う。

 生後3カ月で網膜芽細胞腫を患い左目を摘出。小1の時、右目にも腫瘍が見つかり全盲となった。特別支援学校に転校後、陸上や柔道を始めたが、保育園の時に見たアニメ「キャプテン翼」が忘れられず、筑波大大学院進学後にブラインドサッカーを始めた。

 「生のサッカーを1度も見たことがなかった」ため、指導者の蹴る足を触ったり、シュート時の体の向きや足の開き方などを反復練習した。今では両足で強力なシュートを放つ。「サッカーを見たことがなかった分、走る怖さや(障害物に)当たる怖さがなかったのが強みになった。苦労したけど結果的に良かった」。

 日本選手権では予選ラウンドからの全5試合で6得点を挙げた。決勝では過去8度の優勝を誇るAvanzareつくば(茨城)に対して、高速ドリブルを武器にトリッキーな個人技と強力なシュートを連発。0-3で敗れたが、圧倒的な存在感を示した。

 日本代表(世界ランク9位)は8月の南米遠征でブラジル(同1位)、アルゼンチン(同2位)と対戦する。平均年齢32・07歳の“おじさんジャパン”だが、20年東京大会に向けて重要な試金石となる。「カズ(三浦知良)さんだって現役。僕も負けてられない。2年後にメダルを取るためにおじさんたちの底力を見せつけたい」。ブラサカ界のキングは夢に向かって歩みを止めない。【峯岸佑樹】

 ◆黒田智成(くろだ・ともなり)1978年(昭53)10月9日、熊本県生まれ。網膜芽細胞腫により6歳で全盲になる。02年筑波大大学院に進学後、競技を始める。日本代表の主力として06、10、14年の世界選手権に出場。06~08年の日本選手権では3年連続最優秀選手賞を獲得。所属はたまハッサーズ。呼び名はトモ。164センチ、56キロ。

 

<女子には天才16歳・菊島>

 日本女子代表のエースで16歳の菊島宙(そら、埼玉T.Wings)が日本選手権の得点王に輝いた。5試合で12得点を量産。恩師である黒田の倍となる得点を挙げて「黒田先生には絶対に勝ちたかった。得点では勝てたけど、速さや技術の差はまだまだ」。黒田は菊島について「天才。男子代表で欲しいぐらい」と絶賛していた。