男子66キロ級で瀬戸勇次郎(19=福岡教育大)が2連覇を飾った。出場5選手の総当たり戦をオール一本の4戦全勝で戦い抜いた。

2戦目が事実上の決勝戦だった。相手は藤本聡(44=徳島県立徳島視覚支援学校)。96年アトランタ大会からシドニー、アテネとパラリンピック3連覇、5大会出場で5つのメダルを獲得しているレジェンドだ。得意の背負い投げをかわされ、中盤には三角絞めで追い込まれた。何とか脱出して立て直し、3分29秒、背負い投げからのけさ固めで合わせ技一本。青畳の上で大きく息を吐き出した。

「内容がよくなかった。三角を決められた時は苦しくて『負けるのかなぁ』と思いました」。福岡県立修猷館高出身。3年夏までは健常者の大会に出場し、目立った実績は残せなかった。しかし、視覚障がい者柔道に転じて快進撃が続く。藤本とは初対戦から連敗も、昨年の全日本からこれで4連勝。今年から日の丸をつけて国際大会に参戦し、東京パラリンピック代表を争うポイントで藤本を僅差だが40点リードする。

切れ味鋭い背負い投げ。藤本のともえ投げを側転しながらかわす運動能力。若武者然とした端正なマスク。東京大会のスター候補は「東京には出たいですが、それよりもしっかり自分の力をつけないと…」と言葉を選んだ。藤本とともに出場する来年4月のGP英国大会でより上位に勝ち上がった方が代表を射止める可能性が高い。

「藤本さんは17年の全日本で初めて戦って格の違いを見せつけられ、『この人を目標に』と思わせてくれた人です」。レジェンドに尊敬の念を抱きながら、それを上回る戦いを続ける新星が苦しみながらも力を見せつけた。【小堀泰男】

◆瀬戸勇次郎(せと・ゆうじろう)2000年(平12)1月27日、福岡県糸島市生まれ。先天的に色覚に異常があり、視力は右0・07、左0・05。4歳から柔道を始め、糸島市立前原小時代はスポーツ少年団に、同前原西中、県立修猷館高では柔道部に在籍し、健常者の大会に出場していた。高校3年の夏に視覚障がい者柔道に転向。教職を目指して18年4月に福岡教大に進学し、現在、特別支援教育教員養成課程中等教育部2年生。身長169センチ。初段。