男子は東京パラリンピック代表に内定している鈴木朋樹(26=トヨタ自動車)が、世界を意識した積極的なレース運びで圧勝した。

タイムは1時間22分2秒。2位の山本浩之(54=はぁとスペース)に4分42秒の大差をつけてゴールテープを切った。

スタートから飛び出した。5キロ過ぎには後続を大きく引き離して独走態勢に入る。快晴、ほぼ無風の好コンディション。中盤までは13年に洞ノ上浩太がソウル国際でマークした1時間20分52秒の日本記録の更新を期待させる走りだった。最後はペースが落ちたものの、自己ベストの1時間21分52秒に迫るタイムを刻んだ。

「正直、今までの競技人生の中で一番ハードなレースになった。タイムにはこだわらず、自分の体力にこだわってレースをしました」

昨年4月の世界選手権(ロンドン)で3位に入り、東京パラ代表に内定した。今年3月の東京で自己ベストをたたき出してマラソン初優勝を果たした。そして、新型コロナウイルス過明けの初レース。大会開催に尽力した関係者に感謝しながら、心に刻んでいたのは「チャレンジ」。来年の東京パラを意識して、体力に不安は残るものの常にトップを突っ走る果敢な展開をスタート直後に選択したという。

自主期間が長く続き、競技用車いすのレーサーに乗ったのは7月から。マラソンのための走り込みはできなかったが、短い距離を中心にスプリント力を養うトレーニングに集中してきた。トラックでもT54クラスで400、800メートルの日本記録を持つ。しかし、今月7、8日に行われた関東パラ選手権(東京)では100メートルにも出場して優勝し、スピード、スタートダッシュの感触を確認していた。

「(マルセル)フグ選手やダニエル(ロマンチュク)選手と一緒に戦う機会が多くなることを願っているので、しっかり調整していきたいと思っています」

日本のエースは、東京パラでメダルを争うであろうスイス、米国のライバルの名を挙げながら来年への抱負を語った。この日のレースがその決意表明になった。