【江川マリア〈上〉】15歳浅田真央の姿に心奪われ 足跡たどるように夢中になった

日刊スポーツ・プレミアムでは、毎週月曜日にフィギュアスケーターのルーツや支える人の思いに迫る「氷現者」をお届けしています。

シリーズ第16弾は、江川マリア(19=明治大)の登場です。所属を千葉・船橋市のMFアカデミーに移した22年は、東京選手権や東日本選手権で優勝するなど飛躍のシーズンとなりました。23年シーズンは、昨年22位に終わった全日本選手権での雪辱に向け、さらなる進化を目指します。

全3回の上編では、浅田真央さんに憧れた幼少期や本格的にスケートを始めるまでの道のり、大好きな競技の思いについて描きます。(敬称略)

フィギュア

   

22年全日本選手権、フリーの演技

22年全日本選手権、フリーの演技

昨年の東京選手権、東日本選手権で優勝

江川マリア(えがわ・まりあ)

2003年(平15)12月18日、福岡市東区生まれ。5歳の時に浅田真央さんに憧れて競技を開始。地元のパピオアイスアリーナのスケートクラブで中庭健介コーチらの指導を受け、香椎高時代には全国高校スケート選手権で3年連続表彰台入り。22年に大学進学を機に上京し、千葉・船橋市のMFアカデミーで学ぶ。同年、東京選手権、東日本選手権で優勝。初出場の全日本選手権は22位。158センチ。 

福岡出身、名前の由来は「アヴェ・マリア」

上京して1年半。電車を乗り継いで通う大学への1時間の道のりにも、人生で初めて公道でまたがった自転車にも、すっかり慣れた。

高校時代に校則で厳しく禁止されていたメークは、今ではお手の物。パーマでカールさせたまつげ、目元にはラメアイシャドーがキラリと輝く。指先の銀色のネイルは、19歳を大人の表情にする。

「最初はこっちで生活するのも大変だったけど、もう全然慣れちゃいましたね。両親への連絡の回数もだいぶ減りました。自転車も全く乗れなかったけど、この歳でようやく乗れるようになったんですよ!」

そう、うれしそうにほころばせた横顔には、まだあどけなさも残していた。

彼女の名は、江川マリア。その響きからハーフと間違われることもあるが、故郷の福岡・東区に住む両親はともに日本人だ。

2003年。クリスマスの1週間前の12月18日に生まれた。

名前の由来は、聖歌「アヴェ・マリア」。その曲が大好きだった母が提案し、「いいね」と父も気に入った。しっくりくる漢字がないという理由で、そのまま片仮名でマリアと名付けられた。

「昔はなんで? と思うこともありました。みんなには『なんで片仮名なの?』って聞かれることも多かったです」

幼い頃は、周りと違うことに恥ずかしいと思うこともあった。だが、今では大好きな個性の1つ。

「名前全部入れても画数が少ないので、書くのがめちゃくちゃ楽!」と冗談めかしたあとで、「やっぱり覚えてもらいやすいですから」と、いたずらっぽく白い歯をのぞかせた。

誰もが知る名曲のように、全国のファンに名前を覚えてもらいたい。そしていつかは、エキシビションで「アヴェ・マリア」を演じてみたい。158センチの体にいっぱいの夢を抱いている。

8月11日、木下トロフィー争奪大会でSPの演技

8月11日、木下トロフィー争奪大会でSPの演技

明大2年生、船橋のMFアカデミーが拠点

国内屈指の強豪校明治大学への進学を機に、18年間過ごした福岡を離れた。2022年3月、都内に住んでいた父方の祖母と、千葉・船橋での2人暮らしの生活が始まった。南船橋のMFアカデミーが現在の拠点だ。

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スポーツ

勝部晃多Kota Katsube

Shimane

島根県松江市出身。小学生時代はレスリングで県大会連覇、ミニバスで全国大会出場も、中学以降は文化系のバンドマンに。
2021年入社。スポーツ部バトル担当で、新日本プロレスやRIZINなどを取材。
ツイッターは@kotakatsube。大好きな動物や温泉についても発信中。