【ヤマコウの時は来た!】

 G1高松宮記念杯が始まる。検車場でも近畿勢の気合の入った表情が目についた。地元勢の熱い走りに期待したい。

 初日は村上義弘をピックアップする。スランプに苦しんでいた時期でも、岸和田のファンの声援はいつも温かかった。それを受けて村上も「地元のつもりで走っている」と、ここで走る時にはいつも以上に気迫のこもったレースをしてきた。

 昨年暮れの岸和田GP、関東勢に対して圧倒的不利と言われながらも、自ら混戦を誘った。優勝は武田豊樹だったが、2、3、4着を近畿勢で独占した。戦力差をみれば、私は健闘したと思っている。

 そして舞台は11R白虎賞。最近の村上は、並びで読めない部分もあったが、稲垣裕之の後ろで落ち着いた。そこには、なれ合いで競輪をしたくない、いつも緊張感をもってレースの役割を果たしたい、という思いがある。前を走る後輩に、自分の走りを見てがっかりさせたくない、奮い立たせたいという気持ちだ。稲垣も稲川翔もそれを見て育った選手だ。特に稲垣は、何度も悔し涙を流してこの位置まで上り詰めてきた。そんな稲垣を、兄貴のように村上が見守っている光景を私はよく見る。

 復活間近と思われる深谷知広や、世界で揉まれてここまできた中川誠一郎を相手に、稲垣が主導権を取るだろう。そして、おのおのの役割を果たした上で村上が1勝を飾るとみた。(日刊スポーツ評論家・山口幸二)