【ヤマコウの時は来た!】

 準決12R、逃げた脇本雄太、追い込んだ村上義弘もよく頑張ったが、武田豊樹の驚異的な立て直しが印象に残った。脇本相手に、前を取って堂々と受けて立つ。3着ではあったが、まさしく1番車にふさわしい走りであった。

 その武田が再び平原康多の後ろで優勝を狙っていく。相手は、地元地区で気合十分の近畿勢。武田は、近畿のG1で自分が優勝することに意義があると言う。岸和田はやはり敵地。そこで平原とタッグを組んで近畿を倒したい。そのためには準決をどうしてもクリアしなければならない。しかも、ラインは違っても、村上と勝ち上がって決勝で雌雄を決したいという気持ちが大きかったと、準決が終わった後に話していた。

 初めて村上の存在を知ったのが、デビュー間もない頃に見た03年のG1一宮オールスター。当時競輪の世界をほとんど知らなかった武田にとって、逃げ切りで優勝した村上がとても格好良く見えたらしい。自分もあのような選手になりたい。村上を意識した瞬間だった。それから12年。何回も岸和田で栄冠を手にしてきた武田が、平原とともに再び頂点を目指す。

 絶対に負けられない思いで挑むのは近畿勢。脇本や村上も稲垣裕之を中心に援護してチャンスを待つ。特に稲垣は共同通信社杯、今回と番手戦が続く。まさしく機は熟した印象だ。ここでチャンスをつかめるかどうか、稲垣の優勝を見たい気持ちもあるが、やはり鬼神のごとく立ちふさがるのは武田とみた。(日刊スポーツ評論家・山口幸二)