井口佳典(40=三重)が、鮮やかな2コースツケマイで約6年ぶりのSG制覇を成し遂げた。やや強めの追い風、フライング持ちの重圧をはねのけ、1Mで迷わず強攻。イン白井英治をねじ伏せ、12年7月尼崎オーシャンC以来のSG6勝目を飾った。年末のSG住之江グランプリ出場へ大きく前進した。2着は差した瓜生正義、3着は峰竜太が踏ん張った。

 モンスター47号機の岡崎恭裕に視線が集中した今節。しかし、頂点に立ったのは、獲得賞金アップへ猛烈な執念を見せ続けた井口佳典だった。

 全ての立ち回りが冷静だった。抜群のピット離れで飛び出し、1枠白井英治の焦りを誘うと、スタートは放りながらコンマ12のトップタイミング。1M手前で優位に立つと、艇が浮いたインの白井と、握ってきた3コース岡崎の両サイドを確認。強ツケマイで2艇を同時に制圧した。「ピット離れから、かき回そうと思った。1Mは意外と冷静に、どっち(まくり、差し)でもいけるようにいけた」。万全のVプランを、見事に実現させた。

 メンタル同様にエンジンも最高の状態だった。34号機は、前節駆った川崎智幸が最終日に部品を多く交換。別物と呼べるほど当たりがついた。優勝戦は気温が一気に低下したが、井口に不安は一切なかった。「ペラだけ調整して、ゾーンに入っていい状態だった」と胸を張った。

 約6年の時を経て念願のSGタイトルを手にしたが、満足感はない。その理由は、ただ1つ。SGグランプリ制覇に向けて最も近道の獲得賞金ベスト6入りへ、まだまだ油断できない立場なのだ。

 2節前、戸田周年準優でフライングを切り、重いペナルティー(※メモ参照)が課せられた。「今回はうまくいき過ぎたけど、それぐらいの気持ち。(SG優勝が)1つだけじゃ、足りない。ベスト6入りしか考えていない」。まだまだ勝ち足りない。会心の笑顔は、年末の大舞台まで封印する。【津波謙次】