サッカー界が注目していたマンチェスター・シティの処遇がはっきりしました。スポーツ仲裁裁判所(CAS)に上訴していましたが、なんと結果はシロということで来季も欧州チャンピオンズリーグ(CL)の出場権は確保されました。

さらに監督であるペップ・グアルディオラからは「UEFA(欧州サッカー連盟)は謝罪があってしかるべき」という発言も出ており、なんとも後味が悪い結果となってしまったように感じます。

ここで改めて確認したいのは、「何について引っかかったのか?」ということです。UEFAによると、2012年から2016年にかけてクラブがUEFAに提出した損益報告書でスポンサーからの収入を意図的に水増ししたとされる偽装行為(過去にも同様の疑いで罰金処分が下されている)の疑いがあるということでした。

現地の報道を読み解いていくと、当時の監督・マンチーニが解任された時にその違約金の支払いを含めて債務超過状態になったとのことで、赤字の額が限度を超える状況になりました。これを回避するためには約 990万ポンド(約15億円前後)ほどが必要で、“スポンサーから前借りして穴埋めすればいい”というようなやりとりが全てメールで残っていたとされています。実際にその年のオフにスポンサー契約が発表されており、タイミング・内容が合致しているのではないかとスキャンダルとして出ました。

こういったことに対してUEFAは、今年2月にUEFA主催試合の2シーズンの出場禁止および3000万ユーロ(約35億7000万円)の罰金という処罰を発表。そして先日現地時間の7月13日に、「報告書に偽装は見当たらなく、財務管理部門から報告されていた違反の疑いは立証されず、これにて案件は時効となった」と出場禁止処分の撤回及び罰金の減額(1000万ユーロ)の発表に至りました。

個人的な見解としてみれば、誰もが認める存在で初の選手出身のUEFA評議員ということで期待されていたファン・デル・サールの不可解な落選と、なんらかの形でうまくUEFA評議員に滑り込んだシティのメインスポンサーであるエティハド航空の”ご友人”ことPSGのナセル・アル・ケライフィ氏の存在が気になります。つまり、同志を何らかの形で守ったのではないか?ということです。リーガのテバス会長含め数名はそのきな臭さには気付いているようで、特にPSGのナセル・アル・ケライフィ会長に関しては、「UEFAのテレビ放映権を持つ主要な放送局の一つであるbeINスポーツの代表でもあり、そういった関連会社の代表を務める人物がUEFAそのものの評議委員に採用されるのはどうか?」と発言しました。さらに、同会長は「国家ぐるみでバックにつかれると、一民間企業を相手にスポンサー活動しているチームは勝てる訳がない、さらにオイルマネーが潤沢にある国々であれば尚更である」と発言する始末。

オイルマネーという後ろ盾をもつ中東の国々、そして天然ガスを中心としたバックボーンのロシア、いまや屈指の経済大国になりつつある中国。蚊帳の外から見ると全てが国家ぐるみで動いています。オーナーによる赤字補填を禁じるFFPではありますが、うまくすり抜ける形で実質のオーナーが赤字補てんをしているようにしか見えない状況です。この状況をどのように取り締まり、どのように運営していくのか。コロナウイルス の各国への影響含めて今後の動きに注視していきたいと思います。(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「フットボール金融論」)