ついに4年に一度の祭典がやってきました。今回は初のシーズン中での開催になり、中には怪我を避けるために直前の試合出場を見合わせる選手も出てくるほどでしたが、どのような大会になるのか楽しみです。

経済的な視点から見てみると、その経済効果はどれほど?となるのですが、もうこれは世界規模すぎて測れません。レアル・マドリードでも世界的な経済効果はいかに、という授業があったのですが、結論は数値化できないということで具体的なものはありませんでした。(言語・時差などさまざまなところでの影響力を考察するだけで膨大な資料になってしまいました)。

数値化したところでその実態は想像をはるかに超えることは間違いなく、特にジャイアントキリングなど大国が負けることがあればそれは本当に大きなニュース・経済効果になり得るものです。その未知数の経済効果を持つW杯ですが、実は賞金総額はあまり知られていません。これは名誉の方に価値が置かれており、賞金の為にW杯を戦う意義は小さいとされているからでもあります。その今大会の賞金は総額4億4000万ドルとなっており、2014年のブラジル大会は3億5800万ドル、2018年のロシア大会は4億ドルでしたので、この8年間で約8000万ドル増加したことになります。4億ドルは1ドル=110円換算で440億円ですが140円換算だと560億円にもなりますので、見方を変えるとこの円安は実は日本代表にとってみれば好条件でもあるのかもしれません。細部を見てみると、優勝国には4200万ドル(約60億円弱)、準優勝で3000万ドル(40億円前後)、第3位でも2700万ドル(40億弱)が、さらに第4位でも2500万ドル(約34億円)、5位から8位は一律で(ベスト8進出)1700万ドル(24億円前後)が、そして9位から16位は一律で(ベスト16進出)1300万ドル(19億円前後)が配分されます。グループステージ敗退でも、参加国にはそれぞれ900万ドルが配分されますので、これでも12~13億円を手にすることができることになります。

日本サッカー協会は選手に対する報酬を公開しており、HPによると出場権獲得ボーナスで1000万円が配分されるとしており、W杯1勝ごとに1選手につき200万円を配分するそうです。優勝すると5000万円、準優勝で3000万円、3位は2000万円、ベスト4は1000万円の個人ボーナスとなっており、ベスト8は800万円、ベスト16で600万円となっています。

ざっくりとした収支計算を行うと、仮にベスト8に進出した場合、1300万ドル+1700万ドル=3000万ドル(40億円強)が収入として入りますが、26人の選手分だけ見ても、出場ボーナス2億6000万円+グループリーグ2勝で1億400万円+ベスト16で1億5600万円+ベスト8で2億800万円、総額で7億2800万円の支出になります。ここに経費とスタッフさんなど関係者のボーナスなどが加算されることになりますが、仮にそれが選手分と同額であったとしても半分近くが残りますから、サッカー協会としても非常に大きな収入となります。21年度は28億円、22年度は過去最大とも言われている約46億円の赤字を見込んでいるとされるサッカー協会ではありますから、この賞金はとても大きな役割となります。日本だけでなく全世界的に大変な思いをしたコロナ禍ではありましたが、W杯の賞金を獲得することで損失を取り戻すことができる大きな機会でもあると言えるのではないでしょうか。

初優勝国が誕生するのか、それともやっぱり経験豊富な優勝経験国が栄冠に輝くのか、楽しみです。

【酒井浩之】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「フットボール金融論」)