日本代表MF鎌田大地(26=アイントラハト・フランクフルト)は欧州チャンピオンズリーグ(CL)で、日本人初の3試合連続得点を決めるなど、存在感を増している。今季の飛躍を支えているのが、京都・東山高時代の同級生で、2年前からマネジメントとしてサポートする中村太郎氏(26)。親友が明かす鎌田の素顔とは。

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11年春、京都・東山高校グラウンド。入学前の練習参加日、その初日だった。ガンバ大阪のウエアにおしゃれなキャップという不思議な格好。音楽を聴きながら、座って開始を待つ男がいた。鎌田だった。中村氏は驚き、「えっ?」と思わず声を出して二度見した。

そんな初対面からサッカー部で、しかも同じクラブで3年間過ごした。「ちょっと一緒にいたら、面白いやつだなとすぐに思って」。毎日4時間の練習をこなし、鎌田が中村家で寝泊まりすることもあった。

鎌田は誰よりも練習していた。控えでドリブルのうまい選手を見つけると、話しかけて練習の仕方を教わった。3年時、BチームやCチームの選手が朝練習をしていると聞くとすぐに取り入れた。「試合に絡んでいない選手がやっていて、学校を代表して試合に出ている自分たちがそれ以下の努力しかしないのはおかしい」。鎌田は住んでいた兵庫・尼崎から、朝4時過ぎに起きて京都に向かう。当時、京都市内に住居のあった中村氏は、その鎌田を待って2人で登校するのが日常だった。

サッカー漬けの高校3年間を終えた。Jリーグのサガン鳥栖に入団した鎌田の一方で、中村氏は大学に進学。その後、教員を目指し、卒業後は母校の東山高に赴任した。教員2年目だった20年11月。鎌田から「マネジャー、できるならやってや」と声をかけられた。「誰もができる仕事じゃないし、一緒に仕事をしたいという、鎌田の情熱が一番大きかった」。高校時代からの絆、サッカーへの貪欲な姿勢も十分理解する。教員を辞め、安定を捨て去ることに、ちゅうちょしなかった。そこから高校時代のような二人三脚が再開した。

鎌田は今季、欧州CLで日本人初の3試合連続ゴールを決めた。1日のスポルティング戦では、PK時にレーザー光線の妨害を受けたが、嫌がるどころか口角をあげて笑った。そして3戦連発に成功。動じないふてぶてしさに「あいつらしいな、と思ってしまいましたね」。厳しい練習で知られる母校東山高の福重良一監督にも、鎌田は気兼ねなくメニューの変更を意見し、実際にウオーミングアップなどのメニューは変わった。物おじしない態度は、親友から見れば、いつもの鎌田だった。

かつての本田圭佑のようなストレートな物言いも目立つ。欧州CLの大事な場面でPKのキッカーを務めたことに「自分がチームで絶対的な存在なので、外しても誰も文句は言えない」。1日のワールドカップ(W杯)メンバー発表も「入らないと思っていないから見ていない」。中村氏は「(印象で)損をしているって、鎌田も言っています」と、苦笑いした。いつも通りの鎌田ではあるが、そこに自信も加わったと感じている。

鎌田はけがに悩まされてG大阪ユースに上がれず、高校の部活でサッカーを続けた。本人にとっては1つの挫折だったが、東山高時代に巡り合った中村さんの存在が、その後のサッカー人生で大きな支えになっていることは間違いない。「僕らの学年でプロになったのは鎌田だけ。W杯でも鎌田らしくやってほしいですね。そうやって彼は道を切り開いてきましたから」。中村氏は穏やかな口調で、カタールで輝く親友の姿を思い描いた。【岡崎悠利】

9月27日、エクアドル戦でドリブルする鎌田
9月27日、エクアドル戦でドリブルする鎌田