FIFAワールドカップ(W杯)1次リーグ48試合中半分の24試合を終えて、フランスが強い。初戦と2戦目で違う姿を見せるチームが多い中、D組までの16チームで唯一2連勝。連覇を目指して、一番乗りで決勝トーナメント進出を決めた。

選手たちの「個」の力が圧倒的だ。デンマークの組織的な守備をスピードとパワーで粉砕。特にFWエムバペの速さは誰にも止められないレベル。19歳で前回大会王者になったスピードスターは、4年間でさらに強力になった。

シンプルで分かりやすい攻撃に目を奪われる。左にエムバペ、右にデンベレ、中央にジルーを置き、グリーズマンが後方からFW3人を走らせる。局面の争いに持ち込めば、あとはフィジカル勝負。フランスの戦い方はどこまでも力強い。

かつて、フランスは「シャンパンサッカー」と呼ばれていた。泡がはじけるように細かなパスを次々とつなぎ、華麗に攻めた。将軍プラティニを中心にしたパスサッカーを世界に披露したのは80年代だった。

もっとも「シャンパン」の泡が消えるように、チームもW杯では結果を残せなかった。82年スペイン大会は準決勝で西ドイツにPK戦負け、86年メキシコ大会も再び西ドイツに決勝進出を阻まれた。「泡」は決勝まで持たなかった。

98年地元大会では新将軍ジダンを中心に初めて世界一に輝いた。プラティニは「フランス国民はただ勝っても満足しない。スペクタクルに勝たないとダメ」と言ったが、勝てば国民も喜んだ。勝つことは、何よりも重要。フランス代表は一気に現実路線になった。

大会前、負傷者が続出した。前回大会で優勝に貢献したカンテ、ボグバのボランチ陣が出場を断念し、大会直前にはエースFWベンゼマまで離脱した。

レアル・マドリードで活躍し、10月に世界最優秀選手賞(バロンドール)も獲得したベンゼマの離脱はチーム力低下につながるとされたが、ここまではその不安も見られない。逆に、戦い方が整理されたようにさえ思える。優秀な選手が1人いても、チーム力が上がるとは限らない。サッカーの不思議なところだ。

フランス国内でも代表が好調の理由に「ベンゼマの離脱」がささやかれているという。個性の強いベテランがいなくなり、エムバペら若手が伸び伸びプレーできているというのだ。代表の内紛騒ぎが話題になることが多いフランスだけに、うなずける話でもある。

ここまで終えて、フランスはブラジルと並ぶ優勝候補に挙げられている。確かに1次リーグの安定した戦いぶりは屈指。ただ、優勝狙いのチームにとって、大会本番は決勝トーナメントに入ってから。フランスの現実的な力強さがどこまで続くか、楽しみでもある。【荻島弘一】(ニッカンスポーツ・コム/記者コラム「OGGIの毎日がW杯」)